第33章 世界で一番大切な"継子"※
宇髄さんが扉から出ていくのを見送るため、不死川さんと一緒に外に出ると、彼の後ろ姿が見えなくなるまで二人で立ち尽くしていた。
納得できた部分もあるだろう。
だけど、彼が一番知りたかった…いや、求めていた答えはなかったと思う。
それほどほの花さんとのことは彼の心に色濃く残っているのだろう。
「…助かりました。あまりに此処に来るのが早くて言い訳を考えていませんでした。」
隣に立っている不死川さんにそう御礼を伝えれば「別に…」と大して興味ないといった振る舞いをするが、彼がとても優しくてほの花さんののとを考えての行動だと言うのは分かっている。
「…アイツ、もう結構ほの花を求めちまってるぞォ?大丈夫かよ。」
「もう一度忘れ薬を飲ませる好機は易々と訪れないでしょうし、あとはほの花さんの行動に賭けるしかありません。」
日常の立ち振る舞いこそが一番大切なのだ。
ほの花さんが彼を師匠として扱えば、宇髄さんもそれ以上入ってくることは出来ないはずだ。
そもそもあの時は先に奥様たちとの関係性を断ってからほの花さんと恋人関係になってはずだ。
今の状況では迂闊に手を出そうにも不義になってしまう。
流石の宇髄さんもそんなことはしないだろう。
「…ほの花は…結構思い詰める奴だからよォ…。」
ぽつりと話し出した不死川さんの言葉は彼女を心配してのことだろう。
その内容に異論はない。
「…一人で抱え込まねェように俺も気にするようにはするけどよォ、胡蝶も頼むわァ。」
「そうですね。ほの花さんは物凄く真面目な方ですから。彼女が薬師で良かったです。此処が逃げ場所になれます。」
蝶屋敷が彼女の逃げ場所になれば、此処で思う存分泣いてくれたらいいし、愚痴を吐いてくれて構わない。
彼女は鬼殺隊のために身を削ったのだ。
柱として、彼女のその真っ直ぐな忠誠心を評価してあげなければならない。
宇髄さんのことは…
時が解決すると思いたい。
心の中に残ったほの花さんも時間が経てば薄くなっていくはずだ。
思い出がなくなっていくのは二人がどれほど愛し合っていたかを知る私たちからすればとても残念でならないが、その分ほの花さんを支えていこう。
私たちはそう心に決めている。