第7章 君は陽だまり
近い、近い、近い…
私は今、薬の仕分けをしている。薬草を粉末にした状態のものを小瓶に入れて保管をしているのだが、いや正しくはしていたのだが…
「…なぁ、ほの花。もう一回。いいだろ?な?俺、明日偵察行かなきゃいけないの知ってるだろ?」
「し、知ってます、けど…。」
「俺が死んだらもう二度とできないんだぞ。そんなの御免だ。」
「その前に死なないでくださいよ!なんでそんな悲しいこと言うんですか!」
「じゃあ死なねぇから口づけさせろ。」
「さっきから何十回してると思ってるんですかぁあ!!」
後ろから抱き締められて身動きが取れないどころかチラッと後ろを見れば顎を掴まれて口づけをされる。
しのぶさんの家から帰ってくると虹丸くんが宇髄さんに任務の伝令を持ってきた。
任務があるのは仕方ないし、鬼殺隊の柱としての立場上、広範囲の任務が言い渡される宇髄さんはこう見えて結構忙しい。
家にいても数時間の時もあるし、朝には帰っていることも多いのだがそういう時は真っ先に怪我をしてないか確認してしまう。
私なんかが心配するなんて烏滸がましいとは思うが、一応薬師の端くれだ。
傷の手当てくらいはできるし、薬を作ることはできる。
今度はいつ帰ってくるのかなぁ…とぼんやり考えながらお風呂に入り、部屋に戻ると「よぉ!邪魔してるぜー」と寛いでる人がいた。
しかし、襖を閉めた瞬間、彼に引き寄せられると腰をがっちり掴まれて口づけをされた。
「んっ…!う、宇髄、さ、…!」
「やらしい声出すなよ。止まんなくなるだろ?」
「んうっ、ふ、…っ、」
そのまま暫く口づけを繰り返されてからやっと解放さたので、やりかけだった薬の仕分けを始めたのだが何を思ったのか後ろから抱き締められること数十分、口づけをされ続けること同時間。
何だか感じたことのない変な気分になってきたことが怖くなって、「口づけは今日はもう終わりにしてください…!」と言ったが故、冒頭に戻る。
駄目だと言ったのに何かと理由をつけて"させろ"と言ってくる宇髄さんに困り果てていた。
決して嫌なわけではない。
ただ変な気分になってきたことが怖かっただけ。