第33章 世界で一番大切な"継子"※
「単刀直入に言う。俺の身にここ最近、何かあったか?」
「……はい?そんなこと何故私に聞くんですか?」
遂に来た。
思ったよりもずっと早かった。
宇髄さんが来た瞬間、まずいと思ったのは先ほどのこと。
勘のいい彼が気づくのは時間の問題とは思っていたが、あまりに早くて私自身まだ言い訳を考えてなかった。
背中に汗が伝う。
私の振る舞いがほの花さんが決死の覚悟で忘れ薬を飲ませたと言うのにみすみす無駄に終わることにだけは何としても避けたい。
「ここ最近の記憶が曖昧なことが多すぎる。しかも、主にほの花が関わったことだ。そんなことあり得るか?何か知っていたら教えてくれ。」
「ほの花さんに関わること、ですか。」
…早すぎる。
そんなところまでもう気付いているのか。
「アイツに恋人なんていつ出来た?どんな奴だった?俺に隠す必要なんてねぇだろ?」
「それは私には分かりかねますよ。師匠のあなたに照れ臭くて話したくなかったかもしれませんよ?」
「はぁ?!何で?!」
「…宇髄さん、落ち着いてください…。まだ朝早いんですよ。」
「落ち着いていられるかよ!こちとら色々と困ってんだよ。何でもいい。知ってることがあれば教えてくれ!」
完全に頭に血が上っているのかその目線は血走っていて、拳を握りしめて震えている。
それなのに碌な言い訳が思い浮かばずに唇をかみしめて視線を逸らすことしかできない。
こんなことならば安請け合いなどして協力すると言わなければよかった。
逆にほの花さんに迷惑をかけてしまう。
言い淀む私に追及の手を緩めない宇髄さんが一歩踏み出した時、扉が開いた。
「…ほの花を庇って頭打って一部の記憶が無くなったんだ。お前はァ…。」
その声を聞くと私と宇髄さんは扉の方を一斉に振り向く。
そこにいたのは風柱の不死川さん。
私の目をじっと見つめると頷いてくれた彼はどうやらこの窮地を切り抜ける言い訳を思いついているのだろう。
少しだけホッとすると私は不死川さんの援護をするために呼吸を整えた。