第33章 世界で一番大切な"継子"※
悶々としたまま何とか眠りにつくと、朝早い内から隣の部屋の襖が開く音がして目が覚めた。
眠れたはいいが、不完全燃焼の俺は朝なのに気が立っている。
隣の部屋の物音は間違いなくほの花。
時計を見るとまだ五時を指している。
恐らく鍛錬でもするのだろう。庭に降り立つ音でそう理解するともう一度布団に横になった。
やはりほの花は思った通りの真面目さで仕事も鍛錬もサボることはない。
昨日も夕餉までの時間はずっと薬の調合をしていたらしいし、隙を見つけては何かをしている彼女は生き急いでいるかのように見えた。
いつもの感じからすると全ての鍛錬が終わるのに一時間はかかるだろうし、近くにいると悶々としてまた勃起させてしまう恐怖心もあったので、このまま此処から様子を見ていることにした。
しかし、うっかりうたた寝をしてしまうと、外から水の音が聴こえた。雨でも降り始めたか?と慌てて襖を開けるとそこには手桶を持って頭から水を被るほの花の姿。
水も滴る良い女…とはこのことか、と思うほど気持ちよさそうに水をかぶるほの花。
隊服はペタリとくっついて体の線がくっきりとわかるし、水に濡れた髪がいつもよりも色香を醸し出していてごくりと生唾を飲んだ。
「…綺麗だな…」
思わず声に出てしまった其れに慌てて拳で口を押さえてみたが、出てしまった言葉は変えられない。
チラッと見る先にいるほの花は一度だけでは飽き足らず、二度目、三度目…と水浴びを続けるので、流石に体を冷やしてしまうと危惧した俺は自分の部屋に置いてある敷布を手に慌てて外に向かった。
四度目の水浴びをしようと手桶に水を汲んだ彼女の手を寸前で止めるとこちらを向いたほの花と視線が絡み合った。
「…何してんだ。体が冷えるだろ。もうやめて湯浴みをしろ。」
「あ、師匠!おはようございます!!」
心配してそう言ったのにも関わらず、目の前にいるほの花はあっけらかんとにこーっと笑うと渋々手に持っていた桶を下に降ろした。
「湯浴みは大丈夫です!暑かったので水浴びがちょうど良かったし、私だけのためにお風呂を沸かすのが面倒だったので!お気遣いありがとうございます!」
屈託のない笑顔を向けられているが、ぽたぽたと水が滴るほの花に敷布を巻き付けるのを口実に抱きしめた。