第33章 世界で一番大切な"継子"※
「…まきを、やっぱり…今日はやめとくか。」
自分から誘っておいて、そんなことを言う甲斐性無しの俺なのにむしろニコニコして喜んでいるようにも見えるまきをは起き上がって笑顔を向けた。
「…そうですね!そうしましょう!私、部屋に戻ります!」
「…あー、おお。ごめんな?」
「いえいえ!私もちょっと今日は…違うかなぁ…なんて思ってたんです!すみません!天元様もゆっくり休んでくださいね。おやすみなさい〜」
そこに悲しみの表情はない。
むしろ心底ホッとしたような表情に彼女もまた俺も同じ違和感を感じているように思った。
女を目の前にして勃起しないなんていう屈辱的なことなんて今までなかった。
これは男に備わった自然なことだと思っていたからだ。
それなのにまきをは自分の嫁。
そういう行為だってしたことがあるのに、今日は欲情しなかった。
なぜか分からないが、今も尚、頭の中に居座るのはほの花で彼女を思い出せばきっと勃起してまきをを抱けたと思う。
でも、そんな失礼なことできるか?
他の女を思い浮かべて嫁を抱くなんて失礼にも程がある。
しかも、思い浮かべた女は自分の継子だ。
そんな行為とは縁遠い存在の筈。
まきをが出て行ったのを確認すると目線は自然とほの花の部屋の方を見てしまう。
「…お前さ、派手に邪魔すんなよ…」
そんなことをほの花に言ったところで彼女もまた悪くない。
八つ当たりもいいところだと思う。
だとしても…これ以上ほの花にそんな感情を抱くことは危険だ。
まきをだけでなく、雛鶴も、須磨に対しても同じ反応になってしまいそうでもう怖くて嫁を誘うこともできない。
これから暫く俺は自慰生活を余儀なくさせられるというのか?
嫁がいるのに、嫁に手も出せずに?
勃起しないなんてクソ恥ずかしいことを言えるわけもないし、継子に欲情しているなんていう不義理な状況も言えるわけがない。
少なくとも頭の中からほの花を追い出すのが先決だ。
アイツは俺の継子だ。
それ以上でもそれ以下でもない。
もう一度ほの花の部屋を見て耳を澄ませればすぅすぅ…と寝息が聴こえてきてそれだけで勃ち上がった肉棒が忌々しく思えた。