第7章 君は陽だまり
あたりは薄暗くなってきていて、人通りはほとんどない。
唇に感じる温度が何なのか気付いたのは目の前にあの美丈夫な顔があったから。
息をするのも忘れていたし、何なら目を見開いたまま彼の顔に見惚れていた。
もちろん私はこの行為が初めてのことなので作法をどうしたらいいかも分からない。
可能ならば事前に教えておいて欲しかった。
「目ぐらい閉じろよな。ほの花ちゃんよぉ〜。」
そう言って苦笑いしている宇髄さんの距離が少し離れたことでそれが終わったと知る。どうやら目を閉じた方が良かったらしくて「すいません…」と絞り出すように言葉を紡ぐがだんだんとはじめてのそれを復習するかのように思い出されてボンッと顔が急に熱くなった。
「ひゃ、ひゃぁああ…。」
顔を手で覆うとその場で蹲る私に宇髄さんはギョッとしていたが、呆れたようなため息を吐くとそのまま抱きしめてくれる。
「おいおい…、これくらいでこんなんなっちゃうの?お前。」
「だ、だって…は、初めて、し、したんです…!」
「悪ぃけど、俺は遠慮しねぇからな?慣れねぇとこの先がツラいからな。以上。ほら、抱えてやるよ。」
そう言うと蹲っている私を抱き上げて飄々と歩いていく。遠慮しないってどう言うことだろう?遠慮せず何回も今のをするってことなら私、きっと心臓爆発しそうだ。
「あ、あの…!宇髄さん、目は…と、閉じるものなんですか?こ、今度から事前に言って頂けると…。」
「真面目か。そう言うのはその場の雰囲気だろうが。悟れ。」
悟る、ですって?
正宗たちから今まで生きてきてずっと鈍感だと言われ続けてきた私がそんなことできるのだろうか。
宇髄さんの肩に掴まりながらそんなことをぼんやりと考えていると「心配すんな」と言ってぐるりと向きを変えた彼の顔がまたもや目の前にあった。
「これから飽きるほどにしてやるから。飽きたなんて言ったら許さねぇけど。」
「…っ、あ、飽きません!」
二度目の口づけもまた目を見開いてしまっていたので、彼の来る瞬間を研究しなければと人知れずため息を吐いた。