第33章 世界で一番大切な"継子"※
食事中、隣に座っていても須磨がほの花に話しかけてばかりで碌に話すこともできないのはいつものこと。
昨日の夜とてそれは同じ。
でも、目の前に広がったほの花が作った料理は今まで食べた食い物の中で一番美味いんじゃないか?と言うほど美味くて、もっと食べたいと感じた。
もちろん今日もお館様のところに行くと言う忙しいほの花にそんなことは言えやしないが…。
「あー…鰻な。そうなんだよなぁ、連れていかねぇとうるせぇからな。近い内に連れて行ってやるか…」
「ふふ、でも皆さん嬉しそうでしたよ!朝に買ってもらった物を見せてくれました!師匠、甲斐性ありますね!流石です〜!」
また揶揄われているのかと思いきや、その顔は真剣で本気でそう言っているようだった。
甲斐性があるなんて普通に言われたら喜ぶべきところだとは思うが、全然嬉しくない。
確かに昨日はねだられるがままに三人の欲しいものを買ってやったが、いつも世話になってるし、それくらいしてやるのが当たり前。
喜んでくれたのならば良かったが、目の前にいる女を喜ばせたわけではないのに自分のことのように喜ぶほの花に少し不満がたまる。
「…お前も何か欲しけりゃ買ってやるから言えよ。」
「えー?私ですか?何でですか?」
「…何でって…、別に理由はねぇけど。」
継子に何か買ってやったらいけないという隊律などないし、継子を可愛がるのに理由などいるのだろうか?
それなのに"何故自分に買うのか?"と問うほの花はその理由を敢えて聞いて来たような気がした。
「誕生日でもないですし、自分のお給金で買えますから私のことは大丈夫です。奥様にだけ買ってあげてください。」
"自分に買う必要はない''という理由づけを知らしめるために。
誕生日でなければ贈り物をしたら駄目なのか?
…好きな男でもないやつからはいらないってか?
「それより〜!いつ行くんですか?早めに教えてくださいね!その日は夕餉を作らないといけないので!」
話をすり替えられたかのようにその話題は消えてなくなる。
そんなに変なことなのか?
師匠が弟子を喜ばせようとすることは