第7章 君は陽だまり
宇髄さんは意地悪だ。
私がこんなに狼狽えているのだから答えなんてきっと分かっている。余裕綽々のその表情が物語っている。
それでも「聞かせろよ」と耳元で囁かれて体を引き寄せられてしまえばもう逃げ道はない。
「……っ、き、です…。」
「んー?聞こえねぇなぁ。」
ほら、いま絶対聞こえてたはず。そんな優しい表情してるんだから聞こえてたんでしょう?
それでも離してくれない宇髄さんにいま一度覚悟を決めて彼に向き合う。
「…う、宇髄さん、が…好き、です…!」
言ってしまえばそれはとてつもないほどの幸福感。
好きな人に好きと言ってもらえて、自分も好きだと言えることをどれほど夢見てきたことか。
込み上げてくる涙の理由は恥ずかしいやら嬉しいやら…。私の心は忙しない。
「…ほの花、俺もすげぇ好き。じゃあ、恋仲っつーことで異論ねぇな?」
「は、はい…っ!」
「男に言い寄られたらぶっ殺せ。」
「え?!こ、殺っ?!そ、そんなことできません…!」
「じゃあぶった斬れ。」
「同じことです!!!」
突然の宇髄さんの物騒な発言に若干後退りしたが、もしかしたら"嫉妬"してくれてるのかもと感じたら心がぽかぽかと温かい。
「…なら鎹鴉で呼べ。俺が血祭りに上げてやる。」
「そんなことで使ったら怒られちゃいますよ…!」
「そんなもん関係ねぇ!俺が許可する。」
拗ねたような表情の宇髄さんは何だか可愛くてやっと少し心に余裕が出てきて顔が綻ぶ。あれほど恥ずかしくてたまらなかったのに宇髄さんと目が合うと今度は脳内が蕩けるような感覚。
家まであと少しというところだったのだが、宇髄さんが子どもみたいなことを言い出すから面白くて今度は笑いが込み上げてきた。
「もう、…宇髄さんっ!笑わせないで下さいよ…!」
「……俺を笑い者にするたぁ、いい度胸だなぁ?ほの花ちゃん?」
「だ、だって…!っ、…」
あまりに可笑しくて笑っていたら腕を掴まれてそのまま引き寄せられる。
でも、抱きしめられると思っていたのにその感触はちっとも来なくて
代わりに唇に柔らかい感触を感じたのに気付いたのは
そのすぐ後だった。