第33章 世界で一番大切な"継子"※
ほの花は細い。
まぁ、女だから出るとこ出てて引っ込むところ引っこんでる体系ではあるけど、腕なんて掴み上げたら折れてしまいそうだし、腰なんて無理矢理引っ掴んで……(自主規制)
筋力増強訓練はしていても筋肉はつきにくそうだ。
1000回ずつやるこの訓練もずっとやっていたみたいだし、俺が意地悪しなければちょこまかすことなんてしない奴だ。
間違いなく真面目にやっていたのだろう。
地面でへばっているほの花に冷えた手拭いを渡してやるとそれを顔に押しつけて「気持ちいい〜」と嬉しそうに笑う。
その横に腰を下ろしてそいつの腕を掴むと不思議そうにこちらを見やるほの花。
「ちょっと力入れてみ?」
「え、は、はい。」
そう言って力を入れるほの花の腕はカチコチで筋肉はちゃんとついているのが分かる。
やはり筋肉質ではあるが、筋肉が大きくならない性質なのだろう。
女であることも多少関係あるが、増強訓練はそこそこにして身のこなしや速度を上げる訓練を重点的に行なった方がよさそうだ。
これ以上は体に負担がかかる。
「お前、やっぱ筋肉デカくなりにくそうだな。明日からは受け身と戦闘速度を上げる訓練を重点的に行う」
人間向き不向きがある。
俺みたいに体がデカければそれ相応の細胞を持ち合わせているが、ほの花のように元々線の細い奴は筋肉を増強させようとしても限界を迎えるのが早い。
だからそれは仕方ないことであって、責めたりはしていないのに、俺の言葉にしょぼんと肩を落としたほの花は申し訳なさそうに言葉を紡いだ。
「…ごめんなさい。弱い継子で…」
「あ?…ンなこと思ってねぇよ。女だしよ、人それぞれ向き不向きがあるんだ。長所を伸ばした方が強くなれンだ。そんな顔すんな。」
「…はい。」
それでも悲しそうに笑うほの花にどうしたもんかと頭に手を乗せて乱雑に撫で回してやった。
「あわ、あわわ…!」
「ンな顔してっと不細工になるぞ。」
「むぅ!!ど、どうせ不細工ですよぉ!!」
「不細工になるって言っただけで不細工とは言ってねぇ。」
頬を目一杯膨らませて抗議をしてくるほの花の顔だって整っているし、俺だけでなく誰もが見れば可愛いと…思うはずだ。