第32章 世界で一番大切な"ただの継子"
「えええー!!ほの花さん来ないんですか?!何でぇーー?!せっかくほの花さんのおめかしした姿見られると思ったのにぃ!!」
昼にすっかりめかし込んだ三人が俺の部屋を訪れたのだが、ほの花の姿が見られないことで須磨が不機嫌そうにそう言い退けた
「ンなこと言ってもアイツは夫婦の時間を楽しめって言ってたし、仕事があるんだろ。我慢しろ」
「…ええ…、天元様はほの花さんいなくてつまらなくないんですか?」
「そんなこと言われてもなぁ…俺はアイツの師匠に過ぎねぇし、そこまで強く言えねぇよ。」
不満を露わにした須磨を雛鶴が宥めながら家を出た。いつもこの四人だったのにいつのまにかあの四人が入ってきてその存在感がデカいのは分かる
須磨が寂しがるのもわからないわけではない
「天元様ぁ、次はほの花さんも一緒に行きましょ?!ね?!私からもお誘いするので!」
「おー、じゃあお前らから誘ってやってくれ。俺が言っても遠慮するからよ」
「「「はーい!」」」
確かに夫婦の時間も大切だが、コイツらもほの花のことを大切に思っている
もちろん…俺も
それなのに何処か見えない壁みたいなものを感じる
アイツは此処にいるのに此処にいない
そんな感覚さえある
最近、頭の中で考えるのはほの花のことばかりだ
こんなんじゃ流石にこの三人にも悪い
夫婦なのに他の女のことばかり考える夫など不義もいいところだ
頭からほの花を追い出すかのように振ると、前を楽しそうに歩く三人の後をついて行った
此処らでは一番美味いと評判の甘味処のふたば屋はコイツらも大のお気に入り
ほの花も甘味は好きだ…よな?
女は大体好きだろ?
土産でも買って行ってやろう
そう思いながらふたば屋までの道のりを歩いていると、「こんにちは」と声をかけてきた男がいた。
その男は何処かで見たことある顔…
必死に記憶を手繰り寄せているとそれより先にその男が話し出した。
「宇髄さん、今日は三人も可愛い女子連れてどうしたんですか?ほの花ちゃんは一緒じゃないのかい?」
ほの花まで知ってるその男
何処かで見た顔だと思ったら、コイツはふたば屋の店主だ