第32章 世界で一番大切な"ただの継子"
芋づる式にどんどん根掘り葉掘り聞かれていく私の恋人情報
しかし、一つしゃべってしまえば他を隠す方のが怪しいし、疑問に思うはず。
こうなってしまえばもう全て話してしまえ。
名前さえ言わなければ分からないことなのだから
ただ横で私たちが繰り広げる会話に一言も口を挟んでこないで静観している宇髄さんが怖くてたまらない。
私の恋人のことなんか興味ないと言うことならばそれはそれでいい
興味ない方が普通だ
「えー!ほの花さんと別れちゃうなんて勿体無い!!その人お馬鹿さんですね!!」
「あ、ち、違うんです!その人は悪くなくて…私が一方的にお別れをしたんです。」
「…?何でですか?」
「鬼殺隊だから…いつ死ぬか分からないし…それでも良いって言ってくれた彼を突き放しました。だから彼は悪くありません。」
多少、脚色したけど概ね事実
しかし、全身に伝う汗が私の動揺を物語っている。
「そんなぁ…その人、きっと悲しんでますよ…。ほの花さんのこと忘れられないと思います」
大丈夫、忘れてます。
私とのことは無かったことにしたから
忘れられないと一悶着あるよりやはり忘れ薬を飲ませたのは正解だった。
宇髄さんとは恋仲でない方が精神衛生上良い。
「…ふふ、来世で…お嫁さんにしてくれたらなぁ…なんて夢見てます!いいんです!私には勿体無いくらいの素敵な人だったんです。夢のような時間をもらって感謝してるくらいですよ。」
そう、宇髄さんはとても素敵な人
須磨さんたちの素敵な旦那様を横取りしたみたいになってごめんなさい
もう夢なんて見ませんから…だからその時のことは許して欲しいです
心の中で必死に謝り倒すけどそれを知ってるのは私だけ
私だけの宝物の時間だったのだからそれでいい
「…で、でも…!鬼を倒したら!ほの花さんもまたその人のところに嫁げば良いですよ。」
湿っぽくなってしまったのか須磨さんが必死に盛り上げようとしてくれるけど、私は首を振った。
「残念ながらもう…その人はいないんです。」
私が消してしまったから
きっとみんなの中では私が別れを告げた直後に亡くなったとでも思っているだろう。
でも、それでいい
恋人の宇髄さんはもういないのだから