第7章 君は陽だまり
胡蝶の鎹鴉から「迎エニ来テ下サイ」という連絡が来たのは夕刻。
お茶して帰るという連絡は来ていたがそろそろ帰ってくるかと思っていた頃だったが、急にそんな連絡が入って体調でも悪くなったか、と不安になりながら胡蝶邸に急いだ。
しかし、玄関で待っていたほの花は体調不良というか…、顔は真っ赤で涙目の放心状態。
「…一体、何があった?おーい、大丈夫か。ほの花。」
「う、宇髄さん…!!!」
顔を見た瞬間、凄い速度で俺の後ろに隠れてしまった。俺のことを頼ってくれていることだけは分かるので嬉しいが、随分と唆られる表情をしてくれているから胡蝶が呼んでくれて良かったとため息を吐く。
(こんな顔させたままたった一人で道を歩かせるわけにいかねぇからな)
まぁ、よっぽどの奴らじゃなければ返り討ちにできるだけの強さではあるが。
後ろから出てこないほの花を見て、ニコニコ…いや、ニヤニヤしている胡蝶と向き合う。
「はぁ、あんまいじめんなよ。胡蝶。」
「いじめてませんよ。聞いていただけです。あなたとの馴れ初めを。そうしたらのぼせてしまわれたので…。ふふ。」
ああ、そういうことか。
クソ可愛い顔でいた理由を知ってしまうと今度はこちらの顔がにやけてしまう。
ほの花のこの表情は全て自分のためのものっつーことで間違いない。
そこまで考えると後ろで真っ赤になっているほの花を今すぐ抱きしめたくて仕方ない。
「コイツ、免疫ねぇから。次からは程々にしてやってくれ。じゃ、帰るわ。ほの花、行くぞー。」
「あ、は、はい!しのぶさん!カナヲちゃん!またね!」
玄関に置いてあった大きな荷物を片手にほの花の腰を引き寄せて胡蝶邸を出たが夕陽に照らされているからなのか、更にのぼせたのかは分からないが、ほの花は辛うじて足は進んでいるが更に顔を真っ赤にさせてカチンコチンに固まってしまっていた。