第7章 君は陽だまり
──胡蝶邸
「しのぶさーん。カナヲちゃーん!こんにちはー!」
玄関で声をかけるとあおいちゃんが出てきてくれてすぐに二人がいる居間に通された。
座ったままこちらを見るしのぶさんの顔が…
何だか笑ってるけど怖い。
「お、遅くなってすみません…。」
「いえいえ。私も聞きたいことがたくさんあるんです。積もる話がありますよね?ほの花さん。」
積もる話が一体何関係かなんて考えるまでもない。絶対昨日これなかった理由を聞いているんだ。あんな風に固まってしまったから。
何故私はこんな分かりやすい性格なのだ…!
「…え、と…か、かすてらを…。」
苦し紛れにかすてらを食べにきたと図々しいことを伝えてみるが既に準備された美しい断面のかすてらは嘲笑うかのようにこちらを見ている。
「どうぞ?こちらに用意してあります。今あおいがお茶を持ってきますので。」
「は、はい。いただきます…。」
カナヲちゃんの隣に腰を下ろすとかすてらに手を伸ばす前に刺すようなしのぶさんの視線に狼狽える。
「可愛い花飾りですねぇ?最近買ったんですか?この前来た時は付けてませんでしたよね?」
「は、はい。い、頂き物でして…。」
「へぇ…頂き物…。そうですか。宇髄さんったらまだ嫁を増やそうだなんて不埒なことをしていたのですね。かすてらに猛毒を仕込んで送って差し上げましょうか?」
恐ろしいことをニコニコ笑顔で話すしのぶさんに咄嗟に「ち、違うんですーー!」と会話の流れをぶった斬り言い訳を始める。
このままでは宇髄さんが不真面目な男だと思われてしまう。それだけは避けたい。
彼は私に対して十分すぎるほど誠意を見せてくれていた。
「宇髄さんと奥様たちは今はその、関係を解消されていたようでして…!だから…!」
「やっぱりそうでしたか。ふふ。」
言い訳はまだ始めたばかりだというのにしのぶさんはたった数秒で状況を理解したようでその顔はいつもと同じ笑顔に戻っていた。