第7章 君は陽だまり
「鬼殺隊にいることで、不謹慎だと思うかもしれないけどそんな風に思わなくていいんだよ。幸せになる権利は誰だって持ち合わせているんだから。」
産屋敷様は最後にこう言っていつも通り笑ってくれた。
涙が止まってから薬の調合の仕上げをして、それを渡すと私はまた背中に手を置き、少し摩った。
「毎回言うけど、ほの花は無理しないようにね。僕がこんな体だから迷惑かけて申し訳ないけど、天元が心配するからね。」
いつもいつも産屋敷様の言葉にはドキッとさせられる。私は少し摩っただけで手を外すと頭を下げて部屋を後にした。
ほんの少し重い足取りはいつものこと。
それでも私の心はとてもぽわんと温かい。
認めてもらえるということがこれほど嬉しいことなのだと初めて知った。
こんな気持ちを知れたのも宇髄さんのことを好きになったおかげだ。
「…かすてら、食べに行こ…!」
独り言を誰もいないのに声に出していってみたのは完全に照れ隠し。
頭に浮かぶ宇髄さんの顔にニヤけてしまうから。
「あ…!音花!!宇髄さんにしのぶさんのところでお茶してから帰るって伝えて!!」
「ワカッタケドソンナコトデツカウナ!」
「す、すみません…!」
念願の鎹鴉は「音花(おとか)」と名付けた。
その時は何となく宇髄さんの継子なのだから彼に関係する名前を一字入れようと思っていただけだけど、今となっては好きな人の柱の名前を取ったって絶対分かってしまう。
皆絶対気付く…!
それが小っ恥ずかしくて今更名前を変えたくなってしまい、今朝音花に相談したが「イチドキメタナマエカエンナ」って苦言を呈されてすぐにやめた。
羽ばたいていく音花を見送ると重い体に叱咤激励をして胡蝶邸に向かった。
しかしながら、こんなことで鎹鴉を使うのは私くらいのものだろう…と改めて欲しくなった理由までも恥ずかしくて顔に熱が溜まったのだった。