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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第32章 世界で一番大切な"ただの継子"





「…謝らなければいけないこと?」


肩に手を置き、力を込めるとどんどん彼の悪いところが自分の体に行き渡っているようだった。
でも、大丈夫。

私は最近とても元気だし、大したことない。
彼の熱が下がるまで手を翳すと、フラつく体を押さえるために床に手をついた。


(…大丈夫。大丈夫。)


数秒間、目を閉じて目眩に耐えると薬箱の蓋を開けた。

目眩はまだ少し続いているが大丈夫そうだ。
私は薬を並べながらどう切り出そうか考えるが、取り繕ったとしても事実は変わらないのだからそのまま伝えるしかないだろう。


「…はい。実は昨日、宇髄さんの中の私と恋人同士だった頃の記憶を消しました。折角…お気遣い頂いたのに申し訳ありません。」


「…記憶を…消した…?天元の…?それは、何故だい?」


怒るわけでもなく、咎めるわけでもなく淡々と且つ穏やかな口調でそう聞かれると私はありのままの気持ちを話し始めた。


「宇髄さんは柱です。でも…私のことを守ろうと命を懸けてしまう人でもあります。煉獄さんが亡くなられた今、これ以上の戦力の損失を避けるため柱は絶対的に守らなければなりません。……なんて…格好良く言ってみましたが一番の理由は彼に死んでほしくないからです。私なんかのために命を落としてほしくないからです。」


一気に捲し立てるように話してしまったけど、彼は横になったままそれを黙って聞いてくれていた。

すると急に体を起こそうとした産屋敷様の体を支えた。思ったよりもしっかりと起き上がることができたのは先ほど力を使ったからだろうか?それならば本当に良かった。


起き上がったものの無言で真っ直ぐ庭の方を見ている彼の言葉を待つ。
その顔はとても穏やかでいつもと変わらないように見えた。


「…そうか。…天元は無念だったろうね。彼ほど君を愛し守り抜きたいと思っている男はいないと思うからね。」


「本当に…幸せな日々でした。」


「…きっと天元はいつかまた君の下に来ると思うよ。」


「…??ああ…!知り合いにも宇髄さんが怒って化けて出るよと言われました…!夜はお経でも唱えてから寝ます。」


やはり皆、彼が化けて出ると思っているのだろうか。産屋敷様にまでそう言われて、よっぽど分かりやすいんだなぁ…と宇髄さんのことが可愛く感じた。
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