第7章 君は陽だまり
「今日はいつもと違う音がするね。五芒星の首飾りとは違う音だ。」
そう言うと耳を澄ませるように目を閉じている産屋敷様が目に入る。
「え?……あ…!」
いつもと違う音…と言われて思い当たるのは一つしかなく、咄嗟に髪についている花飾りに触れた。産屋敷様、凄いなぁ。目が見えなくなってきてるから耳が良く聞こえるんだろう。人間の体とはどこかしら不調を来したら、他の部位の機能が発達するらしいから。
「天元にもらったの?」
「え?!あ、えっと!ご、ごめんなさい…!!」
咄嗟に出たのは謝罪の言葉。何に謝っているのだろうと思ったが、鬼殺隊に入って鬼との戦いの真っ最中だというのにこんな邪な感情に支配されて、師匠に恋をしたなんて…。
産屋敷様の配慮があったから宇髄さんの継子になれたと言うのに。
「何故謝ったのかな?」
「…あ、いや…その…。」
「僕はほの花と天元はこれからお互い必要不可欠になるって言ったよね?当たってたかな?ふふ。」
それは少し前に産屋敷様には言われた言葉。
でも、それは継子としてのことだと思っていたので今それを出されてしまえばハッとして目を泳がせた。
「…産屋敷、様…。」
「謝る必要なんてないよ。君たちは相性が良さそうだなって思っていたとも言ったよね。さっき入ってきた君がいつもより女性っぽい空気を感じたからひょっとして…って思ったんだ。」
ああ、空気で伝わってしまうんだ。
産屋敷様には嘘や誤魔化しは通用しない。
こんなことわざわざ言う必要ないのかもしれない。
だとしてもここに来て、私を受け入れてくれた彼は知る権利もあるのではないか。
「…産屋敷様…、私、…。」
「うん?」
「う、宇髄さんのこと、凄く、…凄く好きになってしまったみたいで…。」
「そっか。天元も好いてくれてるみたいだね。そんな泣きそうな声で言わなくてもいいんだよ。君は鬼殺隊である前に一人の女性なんだから。幸せになる権利があるんだよ。」
そうは言っても私の目頭は熱くなり、勝手に涙が溢れ出てきた。
奥様たちとの関係を解消したのは私のせいではないかと少なからず考えてしまっていた私はこの時初めて認めてもらったような気持ちになった。
嬉しくて、嬉しくてたまらなかった。