第32章 世界で一番大切な"ただの継子"
何だ…?この違和感
「あーあ、ほの花さん行っちゃった〜!天元様が意地悪するからですよ〜!優しくしないと他の柱の方の継子になっちゃいますよぉ!私、絶対にそんなこと許しませんからね!」
須磨がそう言って苦言を呈してくるが自分の中の違和感が消せない。
そもそもアイツは俺のこと"師匠"って呼んでいたか?
ほの花たちが此処にきてからどれくらい経った?
先日、上弦の鬼との戦いで煉獄が死んで間もないからか気が動転してるのか?
頭の中で記憶の整理ができない
「ほの花は、俺の継子だよな…?」
「えー?どうしちゃったんですか?そうですよ〜?ほの花さん目の保養ですよねぇ。見てるだけで目が美味しい〜!」
「…あー、まぁ…、そうだな。」
そうだ、ほの花は継子でコイツは須磨でおれの嫁。周りを見渡せばまきをも雛鶴もいる。
俺の嫁は三人。
痴話喧嘩と言われて当たり前だ。
須磨と口論になれば、そうなるのは正解だとわかっているのにとてつもない違和感が押し寄せる。
隣の席はもう空っぽでほの花がいないことにも違和感を感じる。
継子が出かけたくらいで何故こんなに心に穴が開いたような気分になるのだろうか。
ふわりと香るほの花の残り香だけが俺の安心材料。
それだけで心が落ち着いていくような気さえした。
「ほの花さんに恋人ができてもお父さんみたいに怒ったら駄目ですよぉ〜?」
「はぁ?!誰が"お父さん"だ!だからいらねぇだろ!アイツに恋人なんて!」
さっき俺は何て言おうとした?
責任を取ってやるなんてどうするつもりでいた?
あの時、俺は「嫁になれ」って言おうとした。何の迷いもなく
継子に何言おうとしてるんだ。
でも、須磨に"お父さんみたい"と言われて、無理やりそれで納得させようと思った。
そうだ、俺は出来たばかりの継子を可愛がっているから変な男に引っかからないか心配してるだけだ。
父親のように
さっきほの花が言葉を遮ってくれてよかった。そうしなければ俺はアイツに余計な気遣いをさせることになっていた。
嫁が三人もいるくせにこれ以上増やしてどうするんだ。
置いてあった茶を飲み干すと飲み慣れた味なのに何故か虚しく感じた。