第32章 世界で一番大切な"ただの継子"
恋人の私が邪魔だと思ったのは彼があまりに私を大切にしてくれるから
守ってくれるから
いつかこの人はきっと私のために命を落とすのではないか
私のためなら簡単に命をかけてしまう
それが決定的に感じたのは彼の中の"命の順序"の話を聞いてしまった時
第一に元奥様達
第二に一般人
第三に自分
そう言っていた。
決めていたその順序を狂わせたのは私の存在なのは明らかだった。
彼はあっけらかんと私のことを守るべき存在と言いのけたけど、私は恐怖で震えた。
そんな中で煉獄さんの死もあって、私の心は決まったのだ。
彼の中の私を消してしまおうと。
もし薬ができても使うかどうかは正直迷っていた。彼に女として愛されたい、添い遂げたいという欲が邪魔をした。
大好きな彼との幸せな未来を想像するとそれを捨てるには勇気がいった。
だけどそんなもののために彼が命を削るならばいらない。
大好きだからこそ捨てた。その未来よりも大切なあなたが元の生活に戻って幸せになるところを見るのが私の贖罪だ。
彼は私を愛してくれていた。
なによりもだれよりも
守ろうとしてくれていた。
拒んだのは私だ。
その罪は重い。きっと私は地獄に落ちる。
だから愛するあなたが望んだことだけは守るね。
恋人としてはそばにいられないけど、継子としてならずっとそばにいる。
たとえ貴方と三人の奥様の元にたくさんの子宝を授かったとしても自分の子のように可愛がるし、継子として貴方に仕えるよ。
万が一の時の話をしていた時、あなた以外の者にならないと約束したから誰のところにもお嫁にいかない。
恋人も作らないし、結婚もしない。私が生涯愛したのは貴方だけ。
後悔なんてしない。
愛してくれた貴方を捨ててしまった私をどう思ってもらっても構わない。恨んでもいい。嫌いになってもいい。
でもね、別れるなんて出来なかった。
嘘でも嫌いだなんて言えなかった。
これで貴方の命の順序に私はいなくなった。
思う存分、力を発揮して欲しい。
鬼殺隊 音柱として貴方の責務を果たして下さい。
私は貴方とは別の人生を歩むけど、そばにいるよ。
添い遂げられないけど、万が一の時は一緒に逝くよ。
だから願ってもいい?
願うだけならいいよね?
来世は
私のことをお嫁さんにしてね?
大好きな貴方へ
さようなら、愛おしい天元