第7章 君は陽だまり
恥ずかしすぎる。
まともに顔も見られなくなってしまった。宇髄さんはいつも涼しい顔して私を抱きしめたりしてるけど、私だけいつも心臓の高鳴りが異常だ。
この世の羞恥心を私の脳内に集めて地獄の交響曲を奏でていると言うのが言い過ぎではないほどの恥ずかしさなのだ。
あんな風に触れられたことなんてないし、私を見る視線が優しいからそれだけで胸がいっぱい。
薬がたくさん入った鞄を肩にかけると産屋敷様邸へと急ぐが、脳内に響くのは彼の声。
「使うなよ、わかってんな?」なんて言葉はなんてこともないのに何故こんなにも胸がいっぱいになるの。
彼が触れたところ全てが何もかも熱い。
肩にかけている鞄は重いはずなのに浮いているように軽く感じる。
真っ赤な顔を隠すように飛び出してきてしまったけど、そばに居なくても脳内は宇髄さんでいっぱいなのだから私はきっと病気なのだ。
産屋敷邸に行く途中、聴き慣れた声に呼び止められたので振り向くとそこには可愛らしい二人の姿。
昨日会えなかったことで随分と久しぶりに感じる。
「しのぶさん!カナヲちゃん!お出かけですか?」
「そうなんですよ。あ、良かったらほの花さんもどうですか?美味しい"かすてら"を買いに行ってきたんです。」
「わー、かすてら…!魅力的ですけど、今日は産屋敷様のところに行く日なんです。」
かすてらはとても食べたいけど、それを理由に辞めることなどできやしないので泣く泣く諦めることにする。
「あら、それならお館様のところに行ってから是非いらしてください。お借りしていた薬事書も返したいと思っていたんですよ。」
「え、い、良いんですか?」
「はい。てっきり昨日いらっしゃるかと思いきや、来なかったじゃないですか。何かあったんたんですか?」
「え、あ、いや、え、!?」
何かあったと聞かれたらナニカはあったのだが、それを思い出して口に出そうとすれば顔に熱が溜まるのを避けられない私はお決まりのように暫く固まる羽目になる。
そんな私に「…とりあえずお館様のところに行ってきてください。」と助け舟を出してくれたしのぶさんが天使のように感じた。