第31章 忍び寄る終焉※
「毎年花火大会とかお祭りの後はこうやって素麺とか食べるんです〜!涼しくて最高ですぅ!」
「確かにそうですね!」
「ほの花さんの里には花火大会だけでなくお祭りもなかったんですかぁ?」
須磨さんが興味津々と言ったように身を乗り出して聞いてくれるけど、里での娯楽なんて此処に比べたら微々たるもので楽しいものなどない。
「お祭りはなきにしもあらず…と言った感じで、祭事で陰陽師の一族が代々神様へのご祈祷をするだけでした。里の人は何人かは町に降りてお祭りを堪能する人もいたようですけど…私は禁止されていたので…」
今なら分かる。
何故私が頑なに外の世界に一人でフラフラと行ってはいけなかったのか。
ひょっとしたら里の襲撃を予見してあの時、私が外に出るのを許してくれたのかもしれない。
全ては守られていたからだ。
私はいつだって家族に守られて生きてきた。
そして今は宇髄さんに守られて生きている。
有り難いと思う反面、酷く情けない。
もっと私に力があれば…と願わざるを得ない。
「えーー!禁止されてたんですかぁ?!そっかぁ…、じゃあこれからはその時の分もたくさん堪能しなくちゃですね!」
「…はい!楽しみです!」
「次は秋の祭りがあるので一緒に行きましょうね〜!」
満面の笑みの須磨さんに頷くと隣にいる宇髄さんも笑ってくれた。
この世界はとても非情でとても優しい。
相反する世界だ。
誰かが死んでも世界は回り続ける。
でも、それでいいのだと思う。
人はいつか死ぬんだ。
だけど、その人を偲び、想う気持ちは生き続ける。
人の代わりはいるのだ。その人を想う人がいる限り。
煉獄さんみたいな凄い人が亡くなっても鬼殺隊はなくならない。
それは宇髄さんを含めてたくさんの同志達が彼の死を痛み、仇を打つべく日々生きているからだ。
陰陽師の代わりはもういない。
私の代で滅びてしまうのだ。
だけど、それはまた新しい物語の始まりでもある。
この世界は今いる私たちが生きている時代に来るまで、恐ろしいほどの数の人、物、事が繁栄し、衰退してきたのだろう。
私たちはそのほんの一部。
大したことではない。
それでも一生懸命に生きることだけがその人の人生を豊かにする。
煉獄さんの生き様はまさに其れだと思う。