第31章 忍び寄る終焉※
どうせ出店で何か食うだろ?と言うことで花火大会やら祭りに行った後は大体素麺かうどんで軽く食べるのが習慣で、今回も帰ってきたら早々に雛鶴が素麺を運んできてくれた。
人数が増えると素麺の量は増えるし、賑やかになる。俺も男一人だったところに正宗たちが来てくれて退屈しないし、話相手になってもらえるのは有り難い。
三人の元嫁たちが揃って部屋に入ってきたのに其処に愛おしい女がいなかったのですぐに近くにいたまきをに声をかける。
「なぁ、ほの花は?」
「あ、お茶淹れてくれてますよ。もうすぐ来ると思います!」
「あー…茶ね。」
「もう〜、天元様は寝ても覚めてもほの花さんばっかりですね!はぁ、熱い熱い〜。」
揶揄ってくるまきをだけど誰も咎めることをしないのは皆、そう思っているのだろう。
俺自身、ほの花しか興味もなくてそう思われるのも仕方ないこと。
だから何て揶揄われても全く構わない。その通りだからだ。
「ンなこと言っても仕方ねぇだろ?愛してんだから。」
「はいはい。ほの花さんが淹れた美味しい〜お茶をたらふく飲んでくださいね。」
「言われなくともお前らの分で飲み干してやるわ。」
「それは困ります。さっきの茶葉もう今日の分しかないらしいんですよ。美味しいか分からないから少ししか買わなかったんですって。」
ああ…ジジイに勧められたっていう茶葉な。
勧められて断れなかったから少しだけしか買わなかったんだろうか。
優しい性格の奴だからあり得る話だ。
須磨が箸を並べ終えたところで漸くほの花がお盆の上に茶を乗せて運んできたので再びそれを立ち上がって受け取ってやる。
「ありがとう!でも、重くないよ?」
「重いとか重くないとかの問題じゃねぇんだわ。」
自分の女が荷物を持ってたら持ってやるくらいの男気はあるつもりだ。
ほの花が淹れてくれた茶は昼間のと同じで少し苦味があったが、甘い香りがしてなかなか美味い。
「毎年、花火大会はあんな感じなんですか?」
「あー、まぁそうだな。」
「里ではお祭りとかも無かったので凄く楽しかったです!みんなで行けて良かったです〜!」
そう言って嬉しそうに笑うほの花が何故か儚く見えてその場で抱きしめたくなったが、体裁だなんだと気にするほの花のためグッと堪えた。