第31章 忍び寄る終焉※
宇髄さんの屋敷に帰ると既に着いていた雛鶴さんが遅めの夜ごはんに素麺を湯掻いてくれていた。
すぐに私も手伝うため、台所でつゆの準備を始める。
「ほの花さん、いいですよ?簡単ですから。」
「そうそう!ほの花さんはいつも任務が忙しいんだから!今日は一日休んでくださいよ。」
「素麺だけなのですぐにできますよ〜!」
三人の元奥様たちはそう言ってくれるけど、首を振った。いつも悪いなと言う想いももちろんある。でも、煉獄さんが亡くなってからこんな日常も大切だと思わせてもらえた。
だから一緒に食事の準備をしたい、そう思ってのことだ。
「じゃあ、こちらでお茶の準備をしています。素麺はお願いしてもいいですか?」
「あ、さっきのお茶美味しかったです!どこのなんです?」
「産地は聞き忘れてしまいましたが、美味しいか分からなかったので今日の分しか数杯分なさそうです。また新しいお茶を見繕ってきますね。」
「あー、そうなんですね。でも、たまには違う種類のお茶もいいですね!また違うのも飲みたいかも。」
まきをさんが花火大会に行く前に出したお茶が美味しかったと言ってくれたので、次はまた違う種類のものを買ってみようと心に決める。
そうこうしている内に冷水で素麺をしめてくれている雛鶴さんを見て慌ててお湯を沸かす。
「食器の準備とか持っていきますね。」
「あー!まきをさん、手伝います〜!」
「素麺ももう持って行けるから真ん中空けておいてね。」
「「はーい!」」
何でもそつなくこなしてみんなのお姉さん的存在な雛鶴さん
元気印で社交的なまきをさん
天真爛漫で妹みたいに可愛い須磨さん
あの三人だから宇髄さんは妻に選んだんだと思う。三人がお互いの良いところを尊重して、悪いところを補える素晴らしい連携がとれているから。
「ほの花さん、ではお茶はお願いしても良いですか?素麺できたので持っていきますね。」
「はい!大丈夫です!すぐ行きます。」
パタパタと急いで素麺を持っていく雛鶴さんの後ろ姿を見送ると、ポコポコと沸騰し始めたやかんをじーっと見つめていた。