第31章 忍び寄る終焉※
屋敷に帰る途中に須磨と大進が前を歩いているのが見えたので声をかけると、こちらを向いた須磨の様子に俺たちは狼狽えた。
「あ!天元様とほの花さん!」
「す、須磨…!おまえな…。」
「わぁっ!び!びっくりしたぁ…!須磨さん、そのお面…!可愛い〜!」
「いや、可愛かねぇだろ。」
咄嗟に突っ込んでしまったが、このおたふくのお面をつけた須磨のどこが可愛いのだ。
しかし、女子の感覚など俺には分かるわけもなく、こちらを向いた須磨がほの花にそれを渡し出したので頭を抱えた。
「大進様に買っていただいたんです〜!ほの花さんも付けてみてください〜!」
「おい、そんなもん付けんな…」と言う前からほの花は受け取った瞬間にそれを顔につけて俺の方を見てくるので顔を引き攣らせる。
「どうですか?ふふ。」
「あはは!!ほの花さん、可愛い〜!!」
「え、可愛いですか?」
「可愛かねぇわ!元の顔のがいいに決まってんだろ!?」
しかし、そのお面をつけたままこちらを見上げてくるほの花は雰囲気も背格好もほの花そのもので、お面を被ってる以外は特に変わりないので不覚にもその姿が可愛く見えてしまった。
(…変なお面付けてんのにな…)
結局、中身がほの花だと分かっている以上俺はどんなほの花でも愛し続けることができるということだろう。
「えー?大進様は可愛いって言ってくださったのに〜!天元様ったら女心わかってなぁーい!!帰ってから雛鶴さんの茹でた素麺あげませんからね」
「そこ、関係あんのか?!そもそもお前が茹でるわけでもねぇくせに何故俺を責めた?!」
「ま、まぁまぁ…宇髄様。落ち着いてください。須磨さんも悪気は…」
大進はどうにもこうにも須磨の味方だ。
未だにおたふくのお面をつけながら「ふふふ」と笑っているほの花に呆れたように横目で見ながらも穏やかな空気が流れた。
「お前もそろそろそれ外せ。」
「はぁーい。」
素直にそれを外すと綺麗な顔がやっとお目見えしてホッとした。やはりほの花のこの顔が一番慣れ親しんでいて好きだ。