第31章 忍び寄る終焉※
楽しい時間はあっという間に終わってしまう。
打ち上げられた花火はものの30分程度で終わってしまって、空に残る煙が風に乗って流れている姿が寂しく感じる。
「さ、ほの花、下降りるから掴まれ。」
「あ、…うん。」
「どうした?」
「ううん…、もう終わっちゃったなぁ…って寂しくなっちゃっただけ」
続々と帰って行く人々の姿が上からよく見える。
小指にははまりきらない玩具の指輪が玩具の割にはキラキラと輝いていた。
今日は思い出がたくさんできた。
初めてのことだらけだったけど、宇髄さんと過ごせたことが本当に嬉しかった。
「煉獄さん…無事に天国に行けたかな。」
「アイツのことだからもうとっくに着いてるだろ?」
宇髄さんが額に口づけを落としてくれるから擽ったくて目を閉じる。額から瞼、耳へと繰り返される口づけが唇に降りてくると潔くこの場所が木の上だと気付かされる。
「…ん、て、天元…こ、此処、木の上だよ…?」
「…わぁーってる。なぁ、また来年来ような?ほの花。」
口づけはやめてくれたけど、熱情を含んだままの視線に射抜かれるとそんなことを言われる。
そこに笑顔はなく、真剣な表情に胸がどきりと跳ねた。
宇髄さんは私の頬を手で包み込んでくれているけど、そのせいで視線を逸らすことは叶わない。
何故かその瞳がいつもよりも憂いを含んでいるように見えたのは気のせいではないと思う。
だから安心させるように私は微笑む。
(私は…どこにも行かないよ。)
同じように彼の頬を手で包むと言葉を紡ぐ。
「うん。来年も…再来年も…ずーっと一緒に行こうね?一緒に行ってくれる?」
「…ったりめーだろうが。…はぁ、帰るか。アイツらも待ってるだろうし。」
「うん!!お好み焼きも美味しかったねぇ!また食べたいなぁ〜!」
「花火はやらなくても祭りなら秋にまたやるからその時来りゃァいいだろ?食べさせてやるよ。」
そっか。
花火は夏の風物詩なんだな。
お祭りって言うのはきっとこういう出店が出る賑やかなものなのだろう。
宇髄さんは私が体験したことのないことをたくさん経験させてくれた。
初めての恋人
初めての想い人
初めて自分の命よりも大切だと思わせられた人