第31章 忍び寄る終焉※
あんな塵みたいな玩具の中から選んだ物がまさかの指輪で俺は狼狽えた。
そんなものがあの中にあったことにも驚いたけど、ほの花が選んだのも驚いた。
まだ俺は最近巷で流行っている婚約指輪やら結婚指輪とやらも渡していないと言うのにそんな玩具を先に小指にすらはまりきらない状態で喜んでいるほの花に少し変だと感じた。
欲がない奴だとは思っている。
それは今も昔も。
でも、玩具で自分は満足と言われているように感じた。
本物は必要ないと。
婚約者と言っておきながら婚約指輪も渡していなかった自分に責任があるけど、言い知れぬ恐怖を感じた。
夜空に花火が打ち上げられると放心状態になりながら嬉しそうに笑うほの花だったけど、その瞳から涙がこぼれ落ちていることにも違和感を感じてしまう。
何故泣く…?
煉獄の慰霊で来ていると言っても過言ではないからアイツを偲び、流した涙と思って良いよな?
良からぬことを考えているわけではないと思いたい。
「…ほの花、何でそれを選んだわけ?」
「え?あ、この玩具?」
左手を掲げて俺に見せてくれるが、白くて細い手には安っぽい玩具の指輪が小指にはまっている。
その薬指に俺が最初に指輪をはめてやりたかったのに…と言うのは俺の勝手な欲望かもしれない。
それでも、そんな玩具で満足してほしくなんてない。
「だって他のは遊んだことある玩具ばかりだったんだもん!これなら取っておけるでしょ?記念に。」
「……それだけか?」
「それだけか、って?え?どういうこと?」
ほの花は首を傾げながらこちらを向いているが、その顔に迷いなどは見られない。
…やはり気のせいなのか?それならそれでいい。
「俺は…、将来必ずお前の此処に指輪を買うぞ。」
「あはは、私、別に指輪はいらないよー?天元がいればいいの!」
「買うから。つーか、買っておけばよかったな。ごめん。俺の落ち度だ。」
遠慮深いほの花が素直に欲しいって言うわけがないけど、今はその遠慮が怖い。
何を思っている?
何を考えている?
頼むから変な気だけは起こさないでくれよ。
俺はお前と別れる気はない。
二度と離さないと誓ったはずだ。