第31章 忍び寄る終焉※
景品を一つくれるというお兄さんが籠を差し出してくれたのでそれの中身を見ている。
けん玉や羽子板、めんこやビー玉…。
この辺りなら私も里で遊んだことがあったので懐かしかった。
籠の中の玩具を漁っていると、中から子ども用の小さな指輪が出てきた。明らかに玩具で宝石の部分は多分ビー玉の素材のようだった。
もちろん薬指なんかに付けれないし、小指にも第二関節までしか入らない。でも、それが何だか可愛くてそのままの状態で「お兄さんこれにします」と言った。
「へ…?え、そ、そんなのでいいのかい?」
「はい!見てください。可愛い!指に入らないけど!ふふ!」
「……お前な、そういうのは俺がちゃんとしたやつを…「いいの、これで。」」
遮るように宇髄さんをみると、少し眉間に皺を寄せてしまった。
「天元が射的で取ってくれた思い出になるし、これでいいの。ありがとう!お兄さんも!さ、いこ?花火始まっちゃうよ。」
「はぁ…分かった。んじゃ、これ貰ってくわ。次はもっとまともなモン仕入れとけよ〜」
「おぅ!祭りの神!ありがとよ〜!」
射的の出店を後にすると宇髄さんが私に預けていたお好み焼きの包みを掴み、再び手を繋いでくれた。
そろそろ花火が上がるのだろうか。
周りの人がわらわらと川沿いに向かって歩いているのが見える。
しかし、宇髄さんはみんなとは逆方向の人気のないところへ進んでいく。
はじめての花火大会だし、この辺の土地勘は私より宇髄さんのがあるだろう。
何も言わずについて行くと突然、私の体を抱き上げて、飛び上がった。
「ひゃぁっ…!!」
あまりに突然飛び上がったので彼の首に掴まると、それよりももっと驚いたのは大きな爆音と共に夜空に咲いた大輪の花だった。
生まれて初めて見る其れがあまりに綺麗で放心状態だったけど、宇髄さんが連れてきてくれたのは大きな木の上で其処からみるそれがあまりに近く見えて忘れまいと必死に目に焼き付けた。
すると、込み上げてくる涙を止めることができず、頬からそれが流れ落ちた。
「…っ、す、っごい、綺麗…」
「そうだな。」
宇髄さんの温もりが余計に涙を誘う。
大好きで大好きだたまらない彼の胸に頭をもたれさせながら見る花火はこれ以上無いと言うほど美しかった。