第31章 忍び寄る終焉※
「姉ちゃん、あんたは天女様かい!?美人なだけじゃねぇんだな?ほらほら、兄ちゃん。こんな美人におねだりされてやらねぇのかい?」
いや、確かにほの花は俺の方ばっかり見てて見てなかったのは知ってる。大した金額でもないし、景品なんて貰えなくても(つーか、餓鬼の玩具だし)いい。
だが、俺の女は優しい奴だからきっと金に困ってそうなこの目の前の男を助けるつもりでもう一回って言ったんだ。
そうじゃなければそんなおねだりすら言うような奴じゃない。
いつもいつも我儘の一つも言ってこないほの花がそんなことを言うはずが無いのだ。
それでも見上げてくる顔がいつもよりももっともっと可愛くて根負けした俺は仕方なく小銭を多めにその男に渡した。
「え、え、に、兄ちゃん!?」
「あと一回だけやる。釣りはいらねぇ。ったく、お前は俺の女に感謝しろよな?」
「あんたも神かい?!」
「ああ、祭りの神だ!!分かったら崇め奉れ!」
「かたじけねぇ!!」
仕方なく、もう一度コルクを空気銃に詰めるとほの花をチラッと見る。
見るからに興味津々でそれを見つめると俺を見上げてニコニコと笑っていて、コイツの笑顔に弱いんだよな…と自嘲気味にため息を吐く。
「ちゃんと見てろよ?次も当ててやるから。」
「うん!次は見てる!」
ほの花じゃなかったらこんなことにならなかった。でも、それでも良かった。
コイツが俺に我儘を言うことなんて無かったから。そんなことでも少し嬉しいと思ってしまうくらいだ。
空気銃を的に向けると狙いを定めて引き金を引いた。
的に一直線に向かうコルクは真ん中を撃ち抜くと、またもや店主があんぐりと口を開けているが、悪いがこちとら元忍。
クナイやらやりまくってきたんだ。的に当てるなんて簡単すぎることだ。
「わー!すごーい!!」
嬉しそうに手を叩いて喜ぶほの花が可愛いから良しとするが、こんなの俺にやらせたらこの男が無一文になるだけだ。
「くっ…、兄ちゃん、やるな…!姉ちゃん、この籠から一個好きなの持っていきな!」
「餓鬼の玩具を俺の女に寄越すなよな!」
明らかにそれは成人した女子に選ばせるような物では無いのにほの花はニコニコしたまましゃがみ込んで籠を物色しだしたのでまたため息を吐いてしまった。