第31章 忍び寄る終焉※
宇髄さんは私の言葉を聞くとすぐに出店に近い方を歩いてくれて色々説明してくれる。
こんな風に恋仲の男性とお祭りやら花火大会に行くなんて初めての経験で嬉しくて心が躍った。
あんず飴は可愛い見た目に目を奪われていると小さいのを1つ買ってくれた。甘い外側の飴に反して中身が酸っぱかったのには驚いたけど、良い経験になった。
金魚掬いやらたこ焼きやら…珍しいものがたくさんで目移りしながら歩いてると宇髄さんが出店のお兄さんに呼び止められた。
「そこのデッカい兄ちゃん、一回やってってよ。」
「ん?俺?」
「そうそう!美人な姉ちゃん連れて羨ましいなぁ!」
「あんま見んなよ。減るだろ」
いやいや、減らないですよ。袖を引っ張って抗議をしてみるがこちらをチラッと見たきり気にもしてくれない宇髄さんは私の手を引きその出店に向かった。
「あー、射的ね。」
「一回頼むよ〜!」
「仕方ねぇな。ほの花、これ持ってろ。」
買ってくれたお好み焼きの包みを渡されるとそれを受け取って隣に並ぶ。射的と呼ばれるものは何やら空気銃で的を当てる遊びらしい。見たこともなかった私は興味津々で宇髄さんの手元を見る。
「しかも、景品コレかよ。餓鬼の玩具じゃねぇか。シケてんなぁ〜。だから客いねぇんだぜ。」
「金欠で買えなかったんだってー。助かったぜ、兄ちゃん。」
「ンなこと言ったって一回しかやらねぇぞ。」
そう言われて見た先にあったのは確かに子どもの玩具のような物が籠にたくさん入っていた。可愛いって思ったけど、宇髄さん的には不満らしい。
空気銃の先に何かを詰めて狙いを定める宇髄さんの横顔が凄く綺麗で見惚れてしまっていて、撃った物がどうやら的に当たったらしいんだけど、見逃してしまった。
「兄ちゃん、マジか!!当てんなよぉぉ!!金欠なんだよぉぉ!!」
「当てて欲しくねぇなら呼ぶなっつーの!」
ああ、そっか。
景品持って行かれたら損しちゃうのかな?
よく分からないけど、あまりに残念そうなお兄さんが気の毒になる。
「…ねぇ、天元…。」
「ん?」
「…的に当たったところ見逃しちゃったからもう一回やって…?」
お兄さんのためではない、けど、的に当たったところを見たかった私はそう頼んでみると目の前のお兄さんの嬉しそうな顔と反して顔を引き攣らせる宇髄さんが同時に視界に入ってきた。