第31章 忍び寄る終焉※
ゴクッ──
俺は生唾を飲み込んだ。
「…あ、あれ?変だった…?雛鶴さん達は大丈夫って言ってくれたけど…。」
準備を終えてほの花が部屋に戻ってきたのはそれから30分後
しかし、襖を開けたところで俺はド派手に固まった。
ほの花がそう言って不安げにこちらを見つめるけど首を振ることしかできずに、手を掴むと優しく抱き寄せる。
ドクンドクン…
心臓が早鐘している。
いつも飽きるほど賛辞を述べていると言うのに肝心な時に言葉が出てこないなんてどうかと思う。
花嫁衣装に身を包んだほの花を見たら俺はどうなっちまうんだよ…全く。
「…変じゃねー、マジでクソほど可愛い。一瞬、心臓止まったかと思ったぜ…あまりに綺麗で」
「えー?大袈裟だよ。でもありがとう〜!天元も格好いいーー!やっぱりそれにして良かったなぁ…!」
そう言って笑うほの花はいつものほの花なんだけど、俺が買ってやった浴衣が白い肌に映えていて、化粧を施された顔は色香を漂わせている。
結い上げられた髪のせいで露わになった頸が艶かしいが、其処にあった筈の所有印はすっかりその存在感を消していた。
(…チッ、消すなよな…。アイツら…)
いつもよりも色気があるほの花が他の男に見られることなど必至。
いや、いつも見られているのだからもうこれは何処かに隠しておきたいほどだ。
しかし、あまりに可愛いその姿を自分の女だと見せびらかせたい気もしている。
「…あの?天元ー?みんなで縁側で西瓜食べましょうって雛鶴さんが言ってたよ…?」
「抱きてェェ……。」
「ええ?!だ、駄目!!駄目駄目!せっかくきれいにやってもらったのにぃーー!」
「俺はもう見た。俺だけが見てればいいだろ?」
そんな理不尽なことを言って退けてしまうくらいに可愛いほの花を抱きしめたまま離すことができない。
でも、もう一度この頸に口付けて所有印を残してやろうか…と思い、唇を這わせようとしたところで「天元様ぁーー!!」と言う須磨の馬鹿でかい声が聞こえてきた。
「ほら、行こう?」と手を差し出してくれるほの花に仕方なくその手を取ると部屋を出たが、今日の夜"も"手加減出来なさそうにない。