第31章 忍び寄る終焉※
一瞬、ほの花が固まったのが分かったけど、すぐに笑顔で頷いてくれたので突っ込むべきか考えた。
しかし、急に寂しそうな顔をしたと思ったら「花火…」と呟いたほの花にうっかり話題を掻っ攫われて聞かずに違う話題にすり替わってしまった。
そこで直ぐに俺も話を戻せば良かったのだが、出来ずにそのままにしてしまったのは俺の失態だが、あまりに残念そうに俯くほの花を放っておけなかった。
「ん?花火?」
「花火…今年はやめておいた方が…いいよね?ちょっと不謹慎かなって…」
煉獄が死んで間もない話で花火大会なんかでうつつ抜かしていたら、申し訳ないとでも思っているのだろう。
ほの花が考えそうなことだ。
俺はほの花の体を持ち上げて自分の上に乗っけると顔を手で包み込む。
そのまま唇を寄せて、可愛らしいそれを食めば頬を赤に染める彼女が目をパチクリとさせてこちらを見ている。
「花火って何のために打ち上げられるか知ってっか?」
当然ほの花は初めて花火を見るのだ。知る由もないだろう。
首を振る彼女にもう一度口付けると耳元で言葉をかけた。
「鎮魂…だ。慰霊の意味もあるらしい。煉獄のことを考えてるならしっかり弔うために行こうぜ。せっかく明日は晴れそうだ。」
「…そうなの?知らなかった…!…うん、それなら…」
「ん…。じゃあもう一眠りしようぜ?俺はまだ眠ぃ。此処にいてくれよ、ほの花。」
そう言うとゆっくりと俺の上から降りて定位置に戻るとコクンと頷いてくれた。
俺としてはまだ聞きたいこともあるが、先に睡眠を貪りたい。どうせ聞いたところでほの花が浮気したとかそういう類の話ではないことは明白だからだ。
「起きたら鋼鐡塚と何で帰ってきたか…っつーことはしっかり聞かせてもらうからな?」
「へ…?鋼鐡塚さん??あ、…ああ!!あれ?私どうやって帰ってきたっけ…?」
どうやら途中まで鋼鐡塚と一緒だったことも今思い出したようなのでやはり身の潔白は確実だろう。
不思議そうに首を傾げるほの花ごと抱きしめると俺は「今はいいわ、わかってっから。」と言うと目を閉じた。
鋼鐡塚のことよりももっと大事なことを見落としていたと言うのに気付いたのはもっとずっと後のことだ。