第31章 忍び寄る終焉※
宇髄さんの腕の中でその紙を改めて見ると涙が溢れ落ちるのを止められずにいるが、この腕の中にいる時だけはそんな弱い自分の受け入れてくれる最愛の人がいるから気にせずに泣いてしまう。
逞しい腕が私の体を抱き寄せてくれるのでされるがままに彼にくっついている。
「煉獄はよ、ほの花に家族の健康を頼んだんだな。つーことは、お前はアイツの遺志を汲んでちゃんと生きて薬師として煉獄家を支えてやれよ。」
「…うん。煉獄さんとはたくさんお話したことはなかったけど…、こんな風に信頼してもらえるとやっぱり嬉しい、ね?ありがたい…」
「自信持て。此処にも書いてあんだろ。お前は薬師としても婚約者としても最高の女だって。前から言ってんだろ?」
宇髄さんの声が脳に響く。
私に足りないのは"自信"
こんなにもたくさんの人からそれを言われると言うことは私の弱点だということに間違いはないだろう。
宇髄さんは確かに前からそう言ってくれてる。
どんな私も受け入れてくれてそばにいてくれた彼には感謝しかない。
すると、宇髄さんは私の頭を撫でながら、そのまま話を続けた。
「…話したことなかったけどよ、俺はさ、命の順序っつーのをハッキリ決めてる。」
「命の順序?」
それは初めて聞く言葉。
一体どんなことなのか続きを待っていると、その内容に私は固まってしまった。
「ああ。お前と恋仲になるまでは一番最初に守るべきはあの三人の元嫁達。二番目に一般人、三番目に俺だった。…でも、今はお前を最初に守るからよ。絶対に死ぬんじゃねぇぞ。」
一番目は元奥様
二番目は一般の人
三番目な宇髄さん自身
「ま、もちろんアイツらにも"この約束"を伝えてるから守るのは変わらねぇけどな。お前はそれを超越した存在だってこと忘れんなよ。」
宇髄さんはいつか私を守るために命をかける。
それは会話の流れからでも、彼の日頃を見ていても何となく察していた。
だけど、そんな順序を元奥様達との間で約束していたなんて知らなかった。
それではただ守るものが増えただけではないか。
宇髄さんの負担が増えただけではないか。
炭治郎が昨日、煉獄さんとの戦いにおいて「守ってもらってばかりで役に立てなかった」と涙を流していた。
彼は
未来の
私だ。
この時、私はそう感じた。