第31章 忍び寄る終焉※
また竈門炭治郎かよ…。
と一瞬思ったのは内緒にしておこう。
同期だから仕方ないとは言え、仲が良すぎてほの花に関しては心の狭い俺は腹が立つのは通常運転だ。
「お父様にはお会いしてないんだけど、千寿郎くん…とっても可愛かった。」
「クソ似てるだろ?あそこは親父さんも元炎柱でめちゃ似てるんだわ。」
元炎柱の親父さんとも何度も話したことあるが、アイツが炎柱を受け継いでからは殆ど顔を合わせていない。
千寿郎は煉獄と違って気弱な性格で運動神経はあまり良くないが、アイツは可愛がっていた。
最期の言葉を煉獄家に伝えに行ったのが竈門炭治郎と言うことは、アイツはその戦いで最後まで煉獄と共に上弦の鬼と対峙していたのかもしれない。煉獄が後輩を守ったのかもしれないが、どちらにせよ…
よく生きていた。
それに限る。
上弦との戦いにおいて生き残ることがどれほど難しいかこれで露呈した。
煉獄は…無念だったが、竈門炭治郎達は生き残ったのであれば運が良い。
その運を無駄にしてはならない。
「確かに…煉獄さんに見た目は似てた…。千寿郎くんがね、私宛に煉獄さんが書いてくれてあった処方箋を受け取ったんだ…。私なんて付き合いも浅いし、一緒に戦ったわけでもないのに泣いたら他の人に申し訳ない、って思ったけど…、もらった瞬間人目も憚らずに泣いちゃった…」
そう言うともぞもぞと懐から出した巾着は血まみれでその中から取り出したのは一枚の紙。
それを開いて外の陽の光に照らしてみると間違いなく煉獄の筆跡がお目見えした。
──ほの花へ
父上には胃腸薬を
酒を飲み過ぎる故、宜しく頼む
弟・千寿郎には傷薬等外用薬を
よく怪我をする故、宜しく頼む
両名に風邪薬等の常備薬も宜しく頼む
君の薬は世界一だ。自信を持て。
以上──
これは…確かにちょっとクるな。
涙を溢れさせたままそれを見ているほの花の気持ちが少しだけ分かる。
煉獄がほの花の薬師としての腕を評価していたのは知っていたが、試すことのないまま死んでしまった。
それなのにその腕を信頼して、これを書いたのだろう。
ほの花の師匠としても、恋人としても、これ以上の名誉はない。