第31章 忍び寄る終焉※
「上弦の鬼には…煉獄でさえ負けるのか」
任務後の帰り道、新たな鬼の情報を得たのでその場に寄ってから帰ろうと寄り道をしていた。
そんな時だった。
煉獄の…訃報を知ったのは
恐れていたことがついに起こった。
上弦の鬼の強さを目の当たりにしたのだ。
煉獄は強い。
だが…それでも死んだ。
いよいよ腹を括って任務に当たらないといけないだろう。
今までだって命をかける覚悟を持って任務に臨んでいた。
だけど柱が一人死んだ。
それは只事じゃない。
視察程度のつもりだったので、粗方見るが鬼の気配は感じない。こちらもうまく隠しているようだ。
そんなことができる鬼は…十二鬼月の可能性は十分にある。
俺だって無事で済まない可能性は十分にあるのだ。
煉獄が死んだ戦いは大きな戦いだっただろうし、恐らく怪我人も多かったはず。
そうなればほの花もまた蝶屋敷に召集されているだろう。
煉獄の死も…知っているだろうな。
優しい奴だからきっと泣き噦っているだろう。俺のことを心配しているかもしれない。早く帰ってやらないと…。
長期任務とはいえたった三日。
三日といえど俺からすれば長い。
毎日ほの花の顔を見て過ごしたいし、できれば遠方は困る。そんな風に思い出したのはほの花と恋仲になってからだ。
毎日会えることがどれほど嬉しいことなのか、こんな風に本気で人を好きになることを教えてくれたのはほの花だ。
しかし、最高速度で帰ったとしても着いたのは夜明け前で、寝ているだろうほの花を起こすのは偲びないと思いながらも彼女の温もりを欲している自分は我慢できない。
襖を開けて、さぁほの花を抱きしめよう…と思ったのに其処には布団さえ敷かれていなくてがらんとした室内に目を見開いた。
すぐに隣の部屋も確認するが…
いない。
煉獄の訃報は昨日の筈。今日もまた召集があったのか?
不思議に思いながら虹丸を呼びよせる。
「虹丸、音花はどこにいる?」
「探スノカ?」
「ああ、ほの花も一緒にいるだろ?探してくれ。」
「分カッタ」
任務ならば良いが…こんな夜にいないなんてことは心配になる。
何もなければそれでいい。