第31章 忍び寄る終焉※
ほの花の自信のなさは何となく気づいていた。
里であれだけの活躍をしていたと言うのに謙遜ばかりをする女だと思っていたが、ここ最近この近辺に顔を出していて気付いた。
アイツは本当に自分に自信がないのだと。
あれほど薬師として賞賛されても
あれほど音柱に愛されているのに
どこか不安そうなほの花。
音柱が元嫁達と関係を切ってまでほの花と添い遂げると決めて、その想いの強さは周りが認めるほど。
俺だってアイツの想いの強さには敵いやしないと分かってる。だからこそコイツらの仲を引き裂こうだなんて思っていない。
それなのにほの花はそんな想いを知っても尚、自信がないと言う。
恐らく此処から先は俺の出る幕じゃない。
彼女の場合、精神論に近いだろう。
強すぎる責任感と強すぎる協調性が自分を認めてやるのを邪魔をしている。
(…損な性格だな)
そんなことを考えながら音柱の家に向かい歩いていると、あと少しと言う距離のところで背中に何かがもたれかかるような感覚があった。
恐る恐る後ろを振り向くとほの花が顔を突っ伏していて、顔を引き攣らせた。
こんなところでそういうことはやめてもらいたい。音柱に見つかれば本気で殺される。
しかし、どうやら眠気が限界なのかうつらうつらしながらも何とか足は動いている。
「…おい、ほの花。もうすぐ家だからそれやめろ。」
「…うー、うじゅ、いしゃ、…ねむー…」
「俺は音柱じゃねぇ!起きろ!!どのみちお前が起きてねぇとまずいから起きろ!」
そうだ、此処で寝てしまったら俺はどんな顔して家に行けばいい?
疲れが溜まってるだろうほの花のために送ってやろうと思っただけのこと。
そのためにほの花が出てくるまでの間に蝶屋敷の人間に音柱の家を聞いたというのに。
「おい、起きろって…!」
背中に顔を付けているため振り向くこともできずに声をかけることしかできない。
しかし、此処で諦めたら俺は血祭りに上げられる可能性が高い。
そんなことは御免被る。何もしていないと言うのに。
「おい、起きろ!この馬鹿!そんなところで寝るな!」
「…声がすると思ったらお前かよ…」
だから御免被ると思ったばかりだと言うのに…後ろからした声に俺は深いため息を吐いた。