第31章 忍び寄る終焉※
最近、誰からも「自信を持て」と言われる。
それほどまでに自信なさげに見えるのだろう。
間違ってはないし、異論はないけど…自分が情けなくて仕方ない。
「薬師としても恋人としても自信がないわたしは変ですかね…?」
「めちゃくちゃ変だな。自信がねぇならやめろ。」
鋼鐡塚さんの言葉が突き刺さる。
彼は私に取り繕う必要がないから真っ直ぐ衣を纏っていない言葉が一直線に私の心臓を貫く。
「俺なら自信の無い薬師の薬なんて飲みたくないし、自分の女だという自信がない女なんていらねぇな。」
「鋼鐡塚さん…」
確かにそうだ。
そんな女の薬は飲みたくないし、そんな恋人いらない。私だってそう思う。
だけど…、どうやって自信を持てばいいのか分からないんだ。
「うちの里に来ていた時のお前の働きっぷりは立派だった。一流の薬師として申し分ない。音柱もお前のことを心から愛している。自信がないなんて思う必要はない。」
慰めじゃない…
鋼鐡塚さんはお世辞や慰めは言わない人だ。
その言葉がまた心臓を貫くとじわじわと身体中に広がっていく。
宇髄さんに会いたくてたまらなくなった。
彼の腕の中に行きたい。
疲れた体も心も全部彼の腕の中で溶けてしまいたい。
「…ありがとうございます…。鋼鐡塚さんって優しいのにあんな風に炭治郎を追いかけ回したら心象悪いですよ。」
「それに関してはアイツが悪いから俺は悪くない。お前も音柱から伝言聞いたか?舞扇ぶっ壊したら二度と作ってやらねぇからな。」
「き、聞きましたよぉ…、善処します。」
「はぁぁ?!俺が丹精込めて作った舞扇だぞ?!壊さないと誓うまで許さん。」
前言撤回
優しいのは刀のことがない時だけだ。刀が絡むと途端におかしな人になる。
壊すかどうかなんて任務につけば分からないのだから適当なことは言えないと思って、そう言ったのに壊さないと言うまで本当に帰してくれなくてそこでずいぶん時間を使ってしまった。
漸く二人の足が動き出した頃には日が昇って辺りを照らしていた。
そして私の疲れは限界を迎えようとしていた。
ね、眠い…
辛うじて足を動かしているが眠すぎて、先ほどから何度か軽く意識が飛んでいる。
早く宇髄さんのとこで寝たい…。
朦朧とした意識の中、私は頭を壁にもたれさせながら歩くことで足を動かしていた。