第7章 君は陽だまり
あまりに嬉しそうに笑うもんだからこのまま押し倒してやろうかと思ったのに、「ご飯ですよーー!」と言う須磨のクソでかい声が聞こえてきて完全に出鼻を挫かれた。
まぁ、まだ風呂にも入っていないのだからそんな状況でほの花の"初めて"を奪うわけにもいかねぇか。
しかもうっかりしていたがまだ口付けすらぶちかましてねぇ。
ほの花の顔に見惚れて見入ってしまっていたことは否めないし、
コイツは自分の容姿には無頓着だから分かってないと思うが、俺だって自分の腕の中にいまほの花がいて、柄にもなく緊張してんの分かってくんねぇかな。
だから顔が近くて恥ずかしがるほの花に"慣れろ“と言ったのは自分自身に対してもだ。
俺だって毎日毎日ほの花の美しさに結構ヤられてるというのに。
今だって心臓は煩いし、花のような匂いがほの花の髪から香ってきて変な気分になりそうなのだ。
「あ、あの…ご、ごはん…って、須磨さんが…。」
遠慮がちに俺を見るほの花があまりに可愛く上目遣いしてくるものだから完全に当てられて、再び彼女を引き寄せて胸に収めた。
抱きしめてみると確かに身長は高い方だとは思うが、ほの花は華奢だし、柔らかい肢体が体に纏わりつくようで、女性らしい。
加えてこの容姿ならば、コイツより縦寸さえデカければ簡単に奪われるのではないかという心配が頭をよぎり、力強く抱きしめすぎてしまった。
「う、宇髄、さ…し、しぬ…。」
「あ…!悪ぃ悪ぃ!やりすぎた。」
苦しそうに呻いていたほの花を解放すると頭を撫でて立ち上がる。
「須磨がうるせぇから行くか。」
「は、はい。」
あんなでかい声で呼んできたのだから行かなければ行かないで部屋に突入してきそうだ。
座り込んだままのほの花の手を引いて立ち上がらせるとそのまま居間に向かった。
ほの花の頭にシャラっと揺れる花飾りがやっと自分の女にできたという安心感を感じさせた。