第31章 忍び寄る終焉※
さっきまでの刺々しさは無くなり、穏やかな雰囲気を醸し出す鋼鐡塚さんを見るとあの任務の時のことを思い出す。
偏屈な人だとは思っていたし、炭治郎とのやりとりを聞いてしまうとそれは間違いなかったと肯くしかない。
でも、さりげない優しさをくれるのは彼っぽい気がする。
「…あの、その後お身体はどうですか?」
無言で歩いているのも気まずいのでそう聞いてみれば、此方を振り向かずに「問題ない」と言う鋼鐡塚さん。
ズンズン歩いて行ってしまうが、どうやら話してくれる気はあるらしい。
「良かったです…。炭治郎の刀鍛冶も担当されていたなんて驚きました!私、彼とは同期で仲良しなんです。」
「アイツは刀を大事にしない糞野郎だ。次折りやがったら血祭りにあげてやる…!」
そういえば宇髄さんからの伝言でも"舞扇を壊したら新しいのは作らん"と言っていたみたいだし、自分の作る武器にただならぬ愛着を持っているのは間違いなさそうだ。
「…わ、私も気をつけます。宇髄さん、とも…お会いしたんですね。彼から聞きました。」
「…偶然な。その時も…確かあの糞餓鬼に用事で来ていた。」
確か…那多蜘蛛山の任務の後のことだった。
まさか偶然でも宇髄さんと会うなんて凄い確率だけど、彼も柱だ。蝶屋敷付近にいることなんて珍しくもないのだろう。
「…音柱は思ったよりも血の気が多い奴だった。やたらと喧嘩腰だし、ほの花のことに関しては少しの融通も利かない。」
「あ、あはは…。素敵な人、なんですけどね…」
宇髄さんが私に関してはやたらと喧嘩腰だと言うのは認める。
凄く嫉妬してくれるし、私がそんなにモテるわけないのに心配性を炸裂させてくるのは困ってしまうのは昔からだ。
「…だけど……」
前を歩いていた鋼鐡塚さんが急に立ち止まると此方を向き、そのひょっとこのお面を取った。
「ほの花のことが何よりも大切にしているのは分かったし、愛されてるってのも分かった。」
その時の意図はわからないけど、急に彼を認めるような発言に首を傾げると再びお面をつけて前を向いて歩いて行ってしまった。