第31章 忍び寄る終焉※
その鬼ごっこは夜明け前に漸く終了した。
体力回復をさせてはまた炭治郎をおぶさって走り回り、それを繰り返すこと数十回
私の体力も底を尽きた頃、ちょうど鋼鐡塚さんも諦めたようだったので、炭治郎をおぶって蝶屋敷に帰ってきた。
あまりの私のボロボロ加減に、しのぶさんが慌てて駆け寄ってきてくれた。どうやら鬼の襲撃にあったと思ったようだが、事情を説明すると納得したように「お疲れ様でした」と労ってくれた。
「ほの花…本当にごめんね。ありがとう。もうこれからほの花には足を向けて寝れないよ…。」
「そ、そう思うなら…もう勝手にいなくなったりしないで大人しく治療に専念して…。包帯とか変えたら私は帰るから…。」
「ごめんよー!ほの花ーー…!!」
「もういいって…、とりあえずゆっくり休んで…。」
会話をすることも疲れたと思うほどに体力を消耗した。炭治郎の傷口の消毒と薬の調合だけするとそれを彼に渡して、蝶屋敷を後にする。
宇髄さん…もう帰っているかな。
流石に帰ってるか…。
夜はもう明けたし…心配してるかな。
早く帰らないと。
しのぶさんから休んでから帰っても良いと言われたけど、こんなに疲れていると宇髄さんの顔が見たいと思うのは昔から。
顔が見たいし、彼の腕の中で眠りたい。
そうすれば疲れた体もすっかり癒されてしまう。
彼の手は魔法の手なのだ。
「ほの花。」
蝶屋敷を出たところでかけられた声の主が誰かなんてすぐに分かる。
何故なら先ほどまで追いかけ回されていたからだ。
「は、鋼鐡塚さん〜…、もう鬼ごっこはしませんよ…?」
「俺はお前を追いかけ回してたんじゃねぇ。あの糞餓鬼を追いかけてたんだ。あんな餓鬼置いて帰れば良かったろ。」
「彼は私の患者なんです〜!見捨てられませんよ…」
「相変わらずだな」
そう言うと、鋼鐡塚さんが私の荷物を取り上げた。突然軽くなった肩に空気がすり抜けて、よろけてしまったが、腕を掴まれて支えてくれる。
ただ…彼の気持ちを宇髄さんから聞いてしまっていたので、あまりの気まずさに私は目を彷徨わせてしまう。
しかし、すぐにその手は離されて歩いて行ってしまったので、私は慌ててその後を追いかけていった。