第31章 忍び寄る終焉※
宇髄さんのお仕置きがどんな?なんて聞かれるとは思いも寄らなくて、まだ15歳の少年に言うようなことではないと思い、ひた隠しにした。
"抱き潰されるんです"
だなんて卑猥なことをこの子にまだ知ってほしくない。純粋無垢で清らかな心の持ち主の炭治郎にはこんな大人の猥談なんてまだ要らない。
そうやって姉のような気分で歩いていると、蝶屋敷まで残りわずかというところで見たことのある人が包丁を持って此方を見ていた。
え
え?
ちょ、ちょっと待って…?
あれは多分…間違いなくあの人だけど…
なんで此方に殺気だって近づいてくるの?
しかもその手には包丁。
どういうこと?私、何かした?!
すると、炭治郎もわたしの肩越しにその人の姿を確認すると小さく"ひっ…"と悲鳴を上げた。
ああ、そうか。炭治郎も彼が担当だったのを宇髄さんから聞いていたんだった。
しかし、思い当たることがあるのかやたらと恐怖で震えている炭治郎を見れば、私ではなく彼に用事であるということは分かる。
「…た、炭治郎…?に、逃げる?」
「……よ、よろしいでしょうか…?」
「わ、分かった…!」
私は回れ右をして後ろを振り向くと全速力で走り出した。
それと同時に彼の悲痛な叫びが響き渡った。
「刀を無くすとはどういう料簡だ、貴様ァアアアアアッ!!!万死に値する…万死に値するゥッ!!」
あ、ああ…そ、そういうこと。
刀を無くしちゃったんだね、炭治郎…。
しかし、こんな態度の鋼鐡塚さんを見たことがなかったので何だか可笑しくてこんな日なのに少しだけ笑えてきてしまった。
「すみませんすみません!!」
「しかも、貴様ァアアアアア!ほの花に乗っかって移動するなんざ、卑怯者めェエエエエッ!音柱に切り刻まれろ!!」
「ヒィィィッ!そ、それだけはァアアアアア!見逃してください!」
追いかけてくる彼から逃げるように走っているけど、鋼鐡塚さんは鍛錬を積んでるわけでもないのに刀のことになると信じられない力を発揮している。
これこそが鍛冶場の馬鹿力なのか…!
と一人で上手いこと言えたとほくそ笑むのは私だけ。