第31章 忍び寄る終焉※
暫く三人で肩を寄せ合って涙を流し続けたが、千寿郎くんが最初に此方を見て笑ってくれたことで吃逆を上げながらも呼吸を落ち着かせた。
弟である彼が一番ツライはずなのに…。
「ほの花さん、炭治郎さん。兄のために泣いて下さってありがとうございます。お二人に会えて嬉しかったです。」
「いえ…こちらこそ、千寿郎くんのがツラいのに泣き噦ってしまいごめんなさい。今日のところはこれでお暇します。炭治郎も怪我人ですし…」
「お、お手数かけます…、千寿郎くんありがとう!」
私と炭治郎が揃って頭を下げると、千寿郎くんも同じように下げてくれた。
炭治郎の手の中には煉獄さんの日輪刀の鍔だろうか。大切に握りしめられていたところを見ると彼に託されたのだろう。
そうだ、想いは繋がっていくのだ。
ここで終わりじゃない。
絶対煉獄さんの死は無駄にしない。
この時、私と炭治郎は同じことを思っていたと思う。
千寿郎くんに別れを告げ、蝶屋敷への帰り道を二人で並んで歩いていく。
背中には千寿郎くんの視線を感じるので、つらそうな炭治郎の腕を支えるように持ち歩いたが、角を曲がったところで立ち止まった。
そして彼の前に背を向けて座ると、後ろを向いて目で指示をするが、イマイチ分かっていないようで首を傾げる炭治郎に呆れてため息を吐いた。
「…?ほの花?」
「…おぶってあげる。ほら。」
「えええええ?!い、いや、大丈夫!問題ない!歩けるよ!」
「何言ってるの?怪我人なんだから言うこと聞いて?」
明らかに動揺している炭治郎だけど、本当ならば絶対安静。
歩くことも禁止したいのに、出歩いて此処まで一人で来たなんて言語道断だ。
医療者としては見逃せない。
「お、女の子におぶさるなんて…!そんなこと…!」
「私の方がお姉さんなんだから大丈夫よ。」
「な、っ、で、でも…!絶対目方は俺のがあるし…!」
「煩いなぁ、私だって鍛錬してるんだから平気だよ。それなら抱き上げるかどっちがいい?」
「お、おぶさっていいでしょうか?!」
抱き上げられるのがよほど嫌だったのか真っ赤な顔をしながらも私の背中におずおずと乗っかってきたのでそのまま立ち上がり、歩き出した。