第31章 忍び寄る終焉※
「ほの花さんって…薬師のほの花さん…ですか?」
「え…、と…はい。」
「音柱様と恋仲と言う…ほの花さんですか?」
「は、はい…。」
少年の容姿は煉獄さんそっくり。
まるで煉獄さんの幼少期を見ているようで鼻の奥が少しツンとした。
しかし、似ている容姿をしていても性格は全然違うようで少しだけ気弱そうな彼は煉獄さんとは真逆のように見える。
何故私のことを知っているのか分からないまま、彼を見つめていると懐から何かを取り出した。
それは私が渡した薬が入った巾着。
任務に行くと言う彼が私の薬を其処に入れていたのを目の前で見ていたからよく覚えている。
手のひらに乗った巾着は赤黒く染まってしまっていて、それが血染みだとすぐに気付いた。
──ドクン
胸が跳ねた。
彼の生き様が其処にも残っていて涙が込み上げる。必死にそれを食い止めるために奥歯を噛み締めて、口を真一文字に引き締めた。
すると、徐にその少年が巾着の紐を緩めて中を開き出す。
全員の視線がその巾着に向けられると、出てきたのは一枚の紙切れだけ。
私があげた大量の薬は一つも入っていない。
血まみれになっていたから処分でもされてしまったのかもしれない。いくら煉獄さんの形見とはいえ、人の血液が付着した薬は使えないからそれが正しい。
「鬼殺隊の他の方から聞いた話によると、ほの花さんの薬は最期の戦いの前に、一般人の方に全て渡していたそうです。」
なるほど…。煉獄さんらしい。
快活で真っ直ぐな彼の人柄は薬を勿体ぶったりするようなことはしない。
「あなたの薬を"世界一の薬だ!"と皆に言っていたって…聞いた方がいて…。」
「そ、そんな…買い被りすぎです…!」
「そんなことありません…!これを…見てください。」
巾着の中に入っていた一枚の紙切れもまた血が染みてしまっているが、何枚にも折られたそれは破れたりせずに綺麗なままだ。
促されるままその紙切れを受け取り、広げると其処には煉獄さんの字が羅列していて、見た瞬間折角食い止めていた涙腺は崩壊した。
彼の生き様が其処にもあったから。