第31章 忍び寄る終焉※
炭治郎が行きそうなところ…。
怪我をしてるのだからそう遠くには行ってないと思うけど…
「……え、と…どこだろう?」
禰󠄀豆子ちゃんも一緒のようだから、あの体で無茶なことはしないとは思うけど…。
心当たりはないが、当てもなく歩きながら音花を呼ぶ。
「音花〜!」
「何ダ!!音柱ハモウスグ帰ッテクルゾ。」
「ち、違うよ!いつも宇髄さんのことばかり聞いてるみたいじゃない!!」
「…聞イテルジャナイカ。」
だけど、音花からそう言われると少しだけホッとした自分がいた。先ほどまで宇髄さんまで死んじゃったらどうしようということで頭がいっぱいだったというのに。
生存情報が分かっただけでも私の心持ちはずいぶん違う。単純なものだ。
「そうじゃなくて…炭治郎居所を知りたいの。彼の鴉と連絡取れない?」
「分カッタ!待ッテロー!」
音花はいつも宇髄さんの鎹鴉の虹丸くんと連絡を取ってくれたりすることもあって、正直任務だけでなく私用で使わせていただいていることも"多々"ある。
今回は炭治郎の鎹鴉と連絡がつけばいいんだけど…、そう遠くないはずだ。
当てもなく歩くのも返って音花に迷惑かもしれないからこの辺で待っているか。
そこでふと目に入った張り紙に釘付けになった。
そこに書いてあったのは"花火大会"の文字
日時は明後日だ。
物凄く楽しみにしていた。浴衣まで買ってもらったのにこんな時に花火大会なんて行ってもいいのだろうか。
親しい人が亡くなったばかりだ。
宇髄さんだってその気になれないかもしれないし、今回はやめておいた方が良いだろう。
不謹慎な気がしてならないから。
その代わり浴衣だけ着させてもらおう。
選んでもらったそれは本当に可愛くて、素敵なもの。
一緒に来て、縁側でのんびりするくらいは許されるだろう。
「…行きたかった、なぁ…。」
本音を言えば行きたかった。
私たちはお互いいつ死ぬか分からない身
来年共に生きている保証などどこにもない。
少し前の自分なら絶対に生き残って来年も一緒に見るぞ!なんて軽口を叩けたかもしれないが、今はとても言えそうにない。
それほどまでに衝撃だった煉獄さんの死。
今は明日のことを願うことすら難しくて、今生きていることを感謝することが精一杯だ。