第31章 忍び寄る終焉※
溢れ出した涙を止めようと屋敷の陰で蹲る。
私は泣くべきではない。
だって私よりツラい人はたくさんいるんだ。
私がこんなに泣いててどうするの…?
万が一…宇髄さんだったら…?
駄目駄目駄目駄目、考えたらダメ…!!
宇髄さんのことを考えると今度は震えまで止まらない。
溜まった唾液を飲み込むと呼吸を落ち着かせるために深呼吸をする。
肺に溜まり吐き出されるのが二酸化炭素ではなく、悲しみだったらどれほど良いことか。
そんなアリもしないことを考えてしまうのは私が弱いからだ。
精神虚弱だからだ。
これでは勇敢に戦って亡くなった煉獄さんの足元にも及ばない。
戦いにおいても私は鬼殺隊の中でも恐らく中の上程の実力だろう。それなのに心まで弱くてどうするのだ。
気丈に振る舞え。
しのぶさんだって気丈に振る舞っているではないか。
私は目を閉じてもう一度深呼吸を繰り返すと震える体を抱きしめて何とか心を落ち着かせていく。
大丈夫
大丈夫だ
今すべきことは怪我人の看病だ。
炭治郎たちの元に急ごう。
膝に手をつき、押し返すようにして立ち上がると天を見上げて手を伸ばしてみた。
すぐそこで見守ってくれているような気がしたから。
「…自信、持てるように頑張ります…。」
漸くウジウジしていた気持ちにケリをつけると炭治郎達の病室に向かって歩き始めた。
目は腫れていないかガラス戸にほんのり移る自分の顔を確認しながら歩みを進めていると前から善逸の声が聴こえてきた。
「ええ!?炭治郎、いなくなっちゃったの?!」
あまりに大きな声で言っているので此処まで聴こえてきたその内容に目を見開いた。
いなくなった?!
怪我も治っていないのに?!
全速力でその場に向かうと先ほどまで大声を上げていた善逸に声をかけた。
「善逸!!どういうこと?!」
「あ、ほの花…!今日も可愛い…じゃなくて…!炭治郎がいなくなっちゃったみたいで…!」
「ほの花さぁん…、しのぶ様もお怒りで…!ど、どうしましょう?」
そう言われてもやるべきことは一つだ。
だけど此処にいる人は怪我人ばかり。
自ずと自分がすべきことが頭に浮かぶ。
「…私が探しに行ってくる。二人はしのぶさんにそう伝えて。」
炭治郎は私が探し出す。
縁側に置いてあった履物を履くと、勢いよく走り出した。