第31章 忍び寄る終焉※
「あ…ごめんなさい。ほの花さんを不安にさせてしまいましたね。宇髄さんは大丈夫です。この時間に連絡が来ないということは無事ですよ。」
私が喋らなくなったのを不思議に思ったようでしのぶさんが慌てたようにそう言ってくれたけど、私は怖くてたまらなかった。
そんなこと今更考えても仕方ないことだけど…
私たちは命をかける覚悟をしていたのだ。
それなのにどこかその覚悟はふんわりとしたものだったのかもしれない。
煉獄さんの死を知り、漸くそれが現実味を帯びただけの話。
「…大丈夫です。いつかは…、人は皆死にます。大事なのは…その時までどう生きるかです。煉獄さんは…後世に伝わるほどの素晴らしい生き様だったんでしょうね。」
私は医療者だ。
母が患者さんを看取る姿もたくさん見てきた。
そして自分も助けられなかった患者さんだっている。人はいつか死ぬ。
そんなことは分かっているのに
何でこんなに震えが止まらないの
── 君はもっと自信を持て。自信がなくては人を助けることはできない。
煉獄さん…?
自信がないんです。
今の私では宇髄さんを助けることよりも足手纏いにしかならないんです。
「では、炭治郎達のところに戻りますね。」
「…はい。お願いします。」
しのぶさんに会釈をしてから部屋を出るとツンと鼻が痛くなる。
煉獄さんの怪我は私なんかの薬では役に立たないくらい重傷でそのまま亡くなられたんだろう。
薬師なのに
薬を渡したのに
役に立てなかった
医療班として任務に同行していたら助かった…?
そんなものは机上の空論だ。
医療班の人がいたから炭治郎達は助かった。
「また来るって…言ってくれたじゃないですか…ッ…!甘味…っ、持ってきてくれるって…!」
物々交換した甘味は昨日、帰った後に美味しく食べてしまった。
もう残ってない。
任務前に最後にあったのは私なのではないか?
そのまま任務に行くと言っていた。
もっと…!大切な人に会っておいて下さいよ…!
私なんかのところに来る前に。
宇髄さん伝いでも薬なんていくらでも渡したのに。
過ぎたことをこうやってウダウダ言ってもどうしようもない。死者は蘇ったりしない。
分かってるのに
涙が止まらないの