第31章 忍び寄る終焉※
「三人とも暫く安静にしてね。」
言葉はない。
頷くだけの彼らを見ると居た堪れない。
煉獄さんの死を目の前で見た衝撃と悲しみは計り知れないだろうから。
薬箱を片付けると私は報告をするためしのぶさんの元に向かった。報告が終われば暫く三人の看病をしよう。
少しでも心が楽になればいい。
ただ話を聞いてそばにいることしかできないけど…それでもいい。
役に立つとか立たないとかじゃない。
私がそうしたい。
泣きはしたけど…実はまだ夢なんじゃないかと思ってしまう。
あんな風に泣き噦る彼らを見ても尚、私は現実なのか分からなくて首を傾げることしかできない。
しのぶさんも相当ツラいだろう。
彼女の部屋からも悲しい空気が漂ってくるようだった。
「…しのぶさん。ほの花です。」
いつも通り部屋の前で声をかけると、中から「どうぞ」と声がしてくる。その声はいつもと変わらないように聴こえるが、きっとツラいはずだ。
私よりも煉獄さんとは付き合いが長いはずだから。
扉を開けた先にいたのはいつも通りの笑顔のしのぶさんだけど、やはり少しだけ元気がないように見えた。
「ありがとうございます。処置は終わりましたか?」
「はい…。あの、暫く彼らの看病をさせてもらえますか?何もできないですけど…」
「もちろんですよ。お願いします。他の者がやるよりも適任でしょうね。」
処置内容を記した紙をしのぶさんに渡すと、それを見つめた後、窓の外を眺めた。
釣られて私も外を見れば優しい陽の光が降り注いでいて、人が一人亡くなったというのに変わらず続く日常が無常だと感じる。
「…煉獄さんとも、一緒に食事を摂っておけば良かったですね。」
しのぶさんのその言葉に私は目を見開いた。
そうだ、私は何を勝手に他人事のように感じていたのだ?
宇髄さんだって…
いま、任務でいない彼だって…
無事に帰ってくる保証なんてどこにもない。
明日、上弦の鬼と対峙して死ぬかもしれないというのに。
今までは雲の上を歩くようなふわふわとした感覚だった。
だけど
もう一刻の猶予も許されない
決断するなら早いうちにしなければ
私はきっと一生後悔することになる。