第31章 忍び寄る終焉※
(宇髄さん、早く帰ってこないかなぁ…)
そんな想いを胸に抱きながら眠っていたら朝方、音花に叩き起こされたのは朝方のこと。
「ほの花ーッ!!怪我人ーッ!!蝶屋敷ニ急ゲーッ!!」
「んんー…….けがにん…?……怪我人!?」
寝ぼけ眼を擦りながらなんとか枕元に置いてあった隊服を身につける。
昨日行ったばかりなのに、"最近蝶屋敷によく行くなぁ…"なんて呑気な気分でいたのは彼らと再び其処で会うまでだった。
だって昨日別れの挨拶をしたばかりだったと言うのにまさかそこで会うだなんて思いもしないだろう。
宇髄さんはまだ帰ってこないのかな?なんて思いながら蝶屋敷に向かうと、辛辣な顔をしたしのぶさんとすぐに会えた。
いつもニコニコとしている彼女のそんなツラそうな表情を初めて見たので何事かと思い、すぐに駆け寄る。
「しのぶさん…!遅くなりました。何か…あったんですか?」
「ほの花さん…朝早くにまたお呼び立てしてしまってごめんなさい。怪我人の治療をお願いできますか?」
「あ、は、はい。」
聞いても質問には答えてもらえない。
言いたくないようなことなのかもしれないし、あまり深く突っ込むのは失礼だろう。
「こちらです」と言って怪我人の元に案内するために歩き出したしのぶさんの後を追いかけるが、数歩進んだだけで再び立ち止まってしまった彼女に合わせて私も止まる。
その後ろ姿はただでさえ小さくて細いのにもっと小さく見えた。
理由がわからないので、気の利いた言葉をかけることもできずにただただ時間だけが流れていく。
しかし、数十秒の沈黙の後、しのぶさんが天を仰ぎながら口を開いた。
「先ほど…炎柱の煉獄さんが上弦の鬼との戦闘の末、亡くなりました。怪我人は炭治郎くん達です。あなたにお願いしたいです。よろしくお願いします。」
ああ
人の命は
何故
こうも儚いのか
目を見開いたまま私は暫くその場から動けなかった。
これが現実なのかよく分からなかったから。
行かなきゃ
怪我人がいるのだ
柱が亡くなるほどの戦闘に巻き込まれたのならば重傷に違いない
何の感情も抱けないまま私はしのぶさんの後をついていくことしかできなかった。
それほど気が動転していた。