第31章 忍び寄る終焉※
びっっ、くりしたぁあ……
そうか、その手があったか…
そうじゃん!そうじゃぁあん!!
しのぶさんにはそういうことにしとけばよかったじゃん!何であんな態度とったの?!
頭の回転が遅くて気が付かなかった
あの力を使ったから貧血になったということにしておけば、彼女を味方に引き入れることができたというのに…!私の馬鹿馬鹿ーー!!!
脳内で繰り広げられるのは私の愚かな行いを咎める大合唱
だけど、全然うまく取り繕えなかったというのに…隠し事をしていないということにしてくれたような気もする。
「傷は大丈夫そうですね。ご自身の傷薬を毎日塗っていればその内傷跡も消えるでしょう。」
「あ…ありがとうございます。」
「宇髄さんに顔向けできそうですね。嫁入り前なのに傷が残ったら本当に怒られちゃいますよ。」
「あは、あはは…、はい、よかったです…」
既に私の頭の中は隠し事の件でいっぱいで宇髄さんのことまで入ってこない。
それでもしのぶさんはこちらを見てにこりとわらうと傷薬を塗ってまた包帯を巻いてくれている。
言えないことが苦しい。
「あの、しのぶさん。」
「はい、どうしました?」
「いつか、お話しますから…それまで、待っていてください。」
耐えきれなくなった私は珠世さんと初めて会った日、宇髄さんにも言った言葉をまた使って切り抜けることにした。
「…それは、隠し事をしてるということでいいですか?」
「う……、は、ハイ…。」
「分かりました。ですが、こんな無茶はやめてくださいね。下手したら死にますよ。」
「ぜ、善処し「駄目です。」」
私の言葉は彼女の強い語気の物によって遮られてじぃっと見つめられた。
少しだけゾクっと体を震わせた私は彼女から視線を離せないでいる。
「あなたの生死は一人の柱の進退に関わるんです。鬼舞辻無惨を倒すためには誰一人欠けても倒せません。宇髄さんのためにも、鬼殺隊のためにも生きてください。」
「……は、はい…!」
「…はい。出来ました!無茶をするのは今ではありません。いいですね?時機を見誤ってはいけません。」
傷口には綺麗に巻かれた包帯が巻かれていた。
彼女の目は決意に満ちていて、ごくりと息を呑む。きっと…しのぶさんもまた何か考えがあるんだ。
何かはわからないソレをお互いが認識するのはもう少し後のこと。