第7章 君は陽だまり
ちょっと待って待って待って。
頭がついていかない。
いつの間にあの三人の奥様達と関係を解消しているのだ。
そんなことは一度も聞いていない。
それどころか彼女達からも正宗達からも一度も話を聞いたことはない。
"聞かれなかったから言わなかった"ということだとは思うがあまりにいろんなことが変化していて今度は脳内で迷子になりそうだ。
そして、更に衝撃的なのは宇髄さんに好きな女性がいるという新事実。
(あー、終わった…。本当に気持ちを伝える前に終わってしまった。)
あの三人ならば…まだ我慢できたと思うが、これから彼と恋仲となる女性を私は受け入れられるのか不安しかない。
「…そ、そうなんですか…。えと、では…その方に喜んでもらえるといいですね。」
心ここに在らずといった状態だが、師匠の幸せを願わずして何が継子だ。放心状態で何とか彼に伝えた言葉は何故かため息を吐かれてしまった。
すると何を思ったのか徐ろにその箱を手に取ると蓋を開けて中身の花飾りを取り出した宇髄さん。
中身の確認でもしたのだろうか。
宇髄さんからそんな素敵な花飾りを贈られる人が羨ましくて下を向いて畳を眺めることで感情を隠そうと必死だ。
しかし、その畳に急に影ができたかと思うと、シャラっという音が聴こえて頭に違和感を感じた。
「ん、やっぱりお前に良く似合うな。」
「…え?」
目の前には宇髄さん。
その顔はやはり優しく私を見つめてくれているのに、手には先ほど持っていた花飾りは無くなっていた。
その代わりに自分の頭に感じる違和感は間違いなくそれで目を見開いて彼を見つめるしかできない。
「俺の好きな女はすげぇ鈍感なんだよなぁ。今だってせっかく付けてやったのにまだ呆けた顔してんの。まぁ、そんな顔も可愛いんだけどよ。」
「……っ、な、…!」
「だから気に入ったかどうかもわかんねぇの。お前はどう思う?」
そんなこと誰が聞かれると思うのだろうか。
そうやってニヤリと笑った宇髄さんはいつもの彼のそれで涙が溢れてきた。
「…、す、っごく、気に入ったと、思いますっ…!」
「…ばーか。覚えとけよ。俺の愛を無視し続けた罪は重いぞ。」
そう言って手を引かれると彼の胸に吸い込まれた。そこは私の一番安心できるぬくもりがあるところ。
好きで好きでたまらない彼の優しい温もりを感じられるところ。