第7章 君は陽だまり
「どうぞ。」と言われて懐から出した箱を床を滑らせてこちらへ寄越そうとするほの花に首を捻るしかない。
だが、正宗たちからもほの花が本当に鈍感だと何度も何度も言われてきたので、潔く今の状況を理解できた。
(コイツ…自分の物だと気づいてねぇんだな。ったく…。世話の焼けるやつだな。)
俺は仕方なく、それを受け取るフリをするためほの花に一歩ずつ歩み寄る。一歩近付くだけでビクビクするので、嫌われてんのかと錯覚するが顔は真っ赤だし、恐らく自分のしたことを未だに羞恥心でいっぱいなのだろう。
箱を手に取るとほの花の目の前に再び胡座をかき座る。
「これな、好きな女にやろうと思ったわけ。」
「え…?あ、えと…三人の中の誰かにあげるんですよね?」
「いや?だから、好きな女にやりてぇの。」
「……?え、う、宇髄さん…ま、まさか…浮気は良くないですよ…!」
あー、まぁ、そうだな。お前はそういう奴だよな。
そのしがらみがあると俺は自由に恋愛もできねぇし、お前に好きだとも言えない。
「浮気なんてしてねぇよ。アイツらのこと言ってんなら少し前に嫁っつー関係を解消した。今は家族みたいなもんだ。アイツらもこれからは自由に好きな男のところに嫁いでいくだろ。」
「………え、えええええええ?!ちょ、ちょっと待ってください!い、いつですか?!全然、知らなかったですけど!?」
「あー、言ってなかったか。そういやお前は最終選別に行ってたな。わりーわりー!」
敢えて言わなかったのだが、そこはまぁ良いだろ?どうせ言っちまったら自分を責めたりする可能性も十分考えられたからな。
「…そ、そうなんですか…。えと、では…その方に喜んでもらえるといいですね。」
おいおい、まだか。
ここにはアイツら以外にはお前しか女はいないっつーのにそれでも自分だって思わない思考回路はどこで培ってきた?
この鈍感女が。