第31章 忍び寄る終焉※
「ほの花ちゃん、しのぶ様帰っていらっしゃったよ!!」
アオイちゃんがそう言いながら走ってきたのは先ほどのこと。炭治郎も今日診察してよければ蝶屋敷を出ていくとのことで、皆が日常に戻っていくのが嬉しくもあり、寂しくもあった。
「ありがとう。炭治郎、先に診察行く?」
「ううん。ほの花が先にどうぞ。俺は部屋に一旦戻るよ。」
炭治郎にそう言われたので、私はアオイちゃんと共にしのぶさんのところに向かった。
あんな酷い怪我をしていてもみんな治りが早い。
善逸もすっかり手足は元に戻ったようだし、伊之助も本来の元気を取り戻している。
「ほの花ちゃん、足大丈夫?」
「うん。平気だよ〜!ありがとうね。」
アオイちゃんが私の足のことを気にしてゆっくり歩いてくれるけど、気を遣わせてしまって申し訳ない。
「ほの花ちゃんは凄いよね…。カナヲもだけど。」
「えー?何で?カナヲちゃんは凄い強いと思うけど…。」
いつもチャキチャキしているアオイちゃんが少しだけ元気がないように見えるので顔を覗き込む。目は逸らされてしまったけど、ポツリと話される言葉に隠し事ではないことはわかる。
「…私は役立たずだから。最終選別も運良く生き残ったけど、それ以来戦いに行けない腰抜けだもん。」
それは初めて聞いたアオイちゃんの本音。
そんな風に思っていたなんて思わなかった。彼女が此処にいてくれるだけでしのぶさんはとても助かってると思うし、私も遊びに来た時アオイちゃんがいると嬉しかった。
でも、彼女は彼女で誰にもそれを言えずに苦しんでいたのかもしれない。みんなが任務に行く中、自分は此処で残っていることにずっと後ろめたさがあったのだろう。
「…ほの花ちゃんは薬師としても凄いのに、剣士としても凄い。ちょっと…羨ましい。私も役に立ちたかった。」
そう思う気持ちはわかる。
分かるなんて軽々しく言ったらアオイちゃんに失礼かもしれないけど、私も宇髄さんの役に立ちたくて必死だったことがあるから。
あの時は薬師としても、剣士としても、婚約者としても認められたくて仕方なかった。
結局、頑張りすぎて宇髄さんに迷惑かけちゃったのは苦い思い出だ。